1回目はパレスチナ側が1400人以上死亡したのに対し、イスラエル側の死者は10人だった。だが、14年の侵攻では、パレスチナ側は2000人以上死んだが、イスラエル側にも70人の犠牲が出た。
数字上、今回のイスラエル側の犠牲者がいかに凄まじいものであるかが分かるだろうが、ハマスはガザ全体に〝メトロ〟と呼ばれるトンネル網を掘って待ち伏せしており、イスラエルは侵攻部隊に相当の犠牲が出ることを覚悟せざるを得ない。そのためにより周到な準備が必要で、侵攻はもっと遅れるのではないか。
〝ガス抜き〟も狙い
(中東)侵攻にはハマスに連行された約150人の人質を解放し、「ハマスを壊滅させる」(ネタニヤフ首相)という軍事的な目標があるが、政治的な側面も強い。今、イスラエルにはハマスに対する怒りがパンパンに充満している。
攻撃前は、ネタニヤフ政権の司法改革をめぐって国家が分裂していたのとはガラリと変わった。首相は攻撃を事前に止められなかったという失態をかわすためにも、侵攻を余儀なくされているわけだ。
(米国)侵攻の裏には国民の怒りを鎮静化するための〝ガス抜き〟の役割が隠されているのは確かだろう。徹底的に報復しなければ、国民の怒りは収まらず、政権批判となって跳ね返ってくるからだ。
極右政党も抱えるネタニヤフ右派政権はハマスをつぶす好機到来と見ているかもしれない。9・11に衝撃を受けたブッシュ米政権(当時)が「報復の熱狂」に煽られ、国際テロ組織「アルカイダ」を壊滅するためアフガニスタン戦争を開始した状況に酷似していると思う。
(中東)米国はその後、虚偽の情報に誘導されてイラク戦争を引き起こした。その混乱の結果はISの台頭という世界を震撼させたテロ組織生んだのは記憶に新しい。「報復の熱狂」に酔って地上部隊を侵攻させる危うさを感じてしまう。今以上の復讐と殺りくの連鎖になる恐れがある。
中東情勢をウオッチし続けてきた者から見ると、今回の事態はハマスの攻撃の部分だけを切り取って論議するのは不十分だと言わざるを得ない。イスラエルは民主国家を標ぼうしているが、どれだけパレスチナ人の頭上に無差別で爆弾を降らしてきたのかを考えてほしい。
イスラエル軍がレバノンに侵攻し、ベイルートからパレスチナ・ゲリラを追い出した「レバノン戦争」が終わった後、サブラ・シャティーラのパレスチナ難民キャンプで3000人ともいわれる難民が虐殺されたことを忘れてはいけない。