2024年5月18日(土)

教養としての中東情勢

2023年10月13日

(米国)パレスチナ紛争の歴史の中で冷静に事態を見るということだね。ハマスのユダヤ人襲撃は強く非難されなければならない。だが、中東和平交渉を拒否してきたネタニヤフ政権にも非があるということだ。イスラエル軍が侵攻したとして、どのくらい作戦は続くのだろうか。

収拾のオプション

(中東)短期間では終わらないと思う。少なくとも1カ月は続くのではないか。最大の問題は人質を無事にどう救出するかだ。

 ガザの完全封鎖の中、食料や水が不足し、電気も止められ、燃料も底をつくのは時間の問題である。医薬品も入らない。そうした中でイスラエル軍の空爆と砲撃、海からの艦砲射撃が絶え間なくガザに降り注ぐ。人質にも犠牲者が出る可能性もある。

 イスラエル軍はハマスに何度も投降を要求。また住民には「総攻撃するので避難するよう」呼び掛けを行い、空からビラを撒くだろう。

 筆者はレバノン戦争当時、水も電気も止められた中、ベイルートで3カ月間、イスラエル軍の攻撃にさらされた経験があるが、基本的にイスラエル軍の恐怖を煽る手法は変わっていない。だが、「巨大な監獄」に住むガザ市民に逃げ場所はない。

(米国)ハマスはイスラエル軍が攻撃すれば、人質を処刑すると脅しているが、人質は交渉の切り札なので、殺害までには至らないのではないか。その点、ISとは異なると思う。

 住民の被害が急増するなど悲惨な状況がしばらく続いたところで、米国がイスラエルを説得する一方、ハマスとパイプの太いカタールとエジプトなどが停戦の仲介に乗り出すことになるだろう。

 オプションの1つは人質と交換に、ハマスの幹部、戦闘員らをガザから国外に追放するというスキームだ。イスラエルはあくまでも攻撃に関わった者を殺害ないし拘束することを主張するだろう。だが、国民の〝ガス抜き〟が済めば、兵士の損害を増やさないため、バイデン政権の仲介を受け入れる可能性は十分にあるのではないか。

(中東)どうだろう? 今回のイスラエルは甘くない。ハマスの過激分子を受け入れるアラブ諸国があるかも疑問だ。

 すぐにレバノンなどに舞い戻るのは明らかで、イスラエルは簡単には妥協せず、あくまでも攻撃首謀者を差し出すよう要求すると思う。世界は厳しい現実を目の当たりにすることになるだろう。

「特集:中東動乱 イスラエル・ハマス衝突」の記事はこちら

   
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