10月18日に発表された23年9月時点の不動産関係統計と、コロナ前の19年9月時点の比較を表1にまとめた。
4年前と比較して不動産販売額は20%の減少となった。地域別にみると、経済先進地域である東部よりも中部、西部、東北部のダメージが大きい。中国では2010年代半ばから地方都市での不動産建設が加速したが、供給が需要を大きく上回ったとみられる。
中国の不動産バブルと言えば、北京市、上海市、広州市、深圳市の四大都市を中心に取りあげられることが多いが、今回の下落局面ではむしろ地方都市の傷が目立つ。中部や西部では省都クラスの都市でも中古物件価格が10~20%程度下落しているもようだ。より小規模な都市ほど下落幅も大きいようだ。
不動産デベロッパーの資金繰りを直撃してるのがデベロッパー・キャッシュインだ。デベロッパーが得た資金量を指す指標だが、売上が低迷している以上に、銀行融資や社債での資金調達が困難になったことに由来している。
不動産販売は21年7月以降、前年割れが続いている。1990年代末に不動産取引が実質自由化されて以後、中国不動産市場は数度にわたる下落局面を経験しているが、2年以上にわたり継続するのは初めて。過去の下落局面では底値を狙う買いが入って価格は反転してきたが、今回はまだ様子見している動きが強い。
住宅ローン融資残高減少が意味すること
それどころか、この不況は長期化するとの悲観論も広がっているようだ。
それを象徴的に示すのが住宅ローン融資残高だ。2021年後半から伸びが鈍化し、今年6月時点ではなんと融資残高が減少している。住宅ローンの繰り上げ返済が広がっていることが背景にある。
シティグループ中国首席エコノミストの余迎栄氏は22年だけで4兆7000億元(約94兆円)の繰り上げ返済があったと推計している。繰り上げ返済の申請があまりに多く、申し込んでも審査に半年以上も待たされるといった話まで聞かれたほどだ。
住宅ローンは個人でも低利で融資が受けられる数少ない選択肢だ。従来ならば、手持ち資金に余裕があったとしても繰り上げ返済するよりも、投資すること(理想はもう1軒住宅を購入するという投資となるが)が賢明な判断だった。しかし、住宅ローンの利子を上回る好条件の投資先が見つからないなかで、繰り上げ返済したほうが得になってしまった。
住宅ローンはいつでも借りられるものではない。足元の景気判断だけで繰り上げ返済すれば、長期的には損をすることも考えられる。それでも繰り上げ返済の規模がこれほど巨大に広がったのは不況長期化の悲観論が根強いことを示している。