金を借り入れてまで投資するよりも借金を返済したほうが得になる……。企業から個人まで債務縮小に向かった結果としてデフレが長期化したのが日本の「失われた30年」だ。消費者物価指数(CPI)は3%以下に抑えるのが中国政府の目標だが、今年2月以降は1%以下で推移しており、7月には異例のマイナスまで記録した。
投資マインドの減退、物価の低迷……。中国も日本と同じ道に踏み入れたのではないかと懸念する声もある。
危機の脱出は目指さないが中国政府の目標
ことほどさように悲観論が広がっているが、一方で専門家の間では「最悪期は脱した」との声も上がっている。粤開証券首席エコノミストの羅志恒(ルゥオ・ジーハン)氏は18日、「経済低迷圧力の最悪期は脱した」とのコラムを発表した。不動産販売額や不動産投資はいまだに前年比マイナスが続いているものの下落幅は縮小しており、雪崩的な不動産危機のリスクは遠のいたとみている。
不動産価格の下落も鈍りつつある。北京市、上海市の不動産価格はすでに前年比プラスに回帰している。
中国政府は繰り上げ返済を減らすための既存住宅ローン金利の引き下げ、新規住宅ローン発給要件の緩和などの対策を打ってきたが、こうした対策がじわりと効果を上げ始めているようだ。
もっともこれをもってすべて解決にはほど遠い。過去の下落局面では対策が効いて上昇局面に転じると、爆発的に不動産景気が過熱するというジェットコースター的な展開を繰り返してきた。これを避ける目的もあってか、中国当局のハンドリングはかなり慎重であり、今後持続的に回復するとしても、劇的な転換とはならないのではないか。
また、中国政府は恒大集団や碧桂園など債務危機に陥った不動産デベロッパーを救済する意思はないようだ。下請け事業者への支払いや販売済み物件の完成はサポートするものの、投資家の損失は許容するという方針だ。そのため今後もデベロッパーの債務不履行というネガティブなニュースは続くことになる。
つまり、わかりやすい形での危機からの脱出は目指さない。これが中国政府の方針なのだろう。この判断が正しいのかどうか、現時点では判断しがたい。じんわりとソフトランディングを目指すやり方で悲観論を払拭できるのかは未知数だからだ。
今後もしばらくは不透明な中国経済にやきもきさせられる日々が続くことになりそうだ。