「第一列島線」に位置する国々のみならず、その周辺国も、中国に対抗して一致して当たるとの趣旨の「Pact」(協定)を作ることが望ましいとも述べている。容易に実現するとは思えないが、もっともな議論である。
RAND研究所と笹川平和財団が共同で行った調査結果によれば、(1)日本人の多くは、米国の台湾支援が今後ますます強化されることを希望すると回答した。(2)これに対し、韓国、フィリピンの多くの人たちは米国の台湾支援が今日の状況のまま続くことを期待すると述べた、という。
台湾海峡の有事が与える衝撃を考え、安倍元首相は「台湾有事は日本有事」であると警鐘をならした。また麻生・自民党副総裁は、2023年8月、台北において講演し、「日本、台湾、米国をはじめとした有志国には戦う覚悟が求められている」と主張し、「いざとなったら、台湾防衛のために防衛力を使う。その明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」と明言した。
結局のところ、台湾への中国の攻撃・侵攻を抑止することが台湾のみならず、台湾の隣人たちの利益ともなることを、一番よく理解しているのは日本人であろう、とTaipei Timesが述べているのは的を射たものと言えよう。
増加する中国軍隊の台湾侵入
本論説は、日本は台湾に事実上の防衛駐在官(de facto Defense Representative in Taiwan)を日台交流協会台北事務所に駐在させることになった、とロイター電を引用しながら述べている。その詳細は承知していないが、現有の防衛駐在官を増員する動きがあったとしても何らの不思議はない。
なお、米国については、国内法「台湾関係法」を持ち、事実上、武器の供与・売却を台湾に行ってきており、非公開の形で、長年にわたり多岐にわたる防衛協力が行われてきている。従って、米台間の防衛関係者の人的交流をことさら新しい動きとして見る必要はないものと思われる。
米国防総省はごく最近、中国の軍事動向に関する年次報告書を発表し、中国が台湾への外交、政治、軍事面で圧力を強めていることを指摘した。同報告書によると、2022年に中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIS)に侵入した回数は1737回に達し、これは前年比79%増になったことが記載されている。
なお、バイデン大統領は台湾やイスラエル、ウクライナへの防衛支援を含む約1千億米ドル(15兆円)の追加予算の承認を議会に要請したと報じられている。