2024年5月20日(月)

脱炭素・脱ロシア時代のエネルギー基礎知識

2023年11月18日

食料自給率とエネルギー自給率

 日本の2022年度のカロリーベースの食料自給率は38%(生産額ベースでは58%)。作物により自給率は異なります。主な作物の自給率は図-1の通りです。お米は99%、野菜79%ですが、小麦の自給率は15%です。

 自給率の低い小麦を輸出している国は米国、カナダ、豪州、ロシアなどです。いざと言う時に全世界が凶作に見舞われていない限り調達は可能でしょう。

 一方、図-2が日本のエネルギー自給率の推移を示しています。自給率が今13%しかないのは、国内で石油、石炭、天然ガスの生産がほとんどないことと原子力発電所の再稼働が進んでいなことが理由です。

 水力、太陽光発電などの再生可能エネルギー(再エネ)は国産エネルギーです。加えて国際エネルギー機関は原子力発電も自給率に加えています。燃料を一度装着すれば数年に亘り運転可能なことから国産エネルギーに準じるものとされます。

 図-2の「原子力寄与」が自給率内の原子力分を示しています。原子力発電の拡大により日本の自給率は2010年には20%を超えますが、11年の福島第一原発事故により一挙に落ち込みます。

 化石燃料の生産国と輸出国は限定され、さらに特定の地域、国に大きく依存しています。日本が原油と石油製品の輸入の80%を依存している中東諸国からの出荷が紛争によるホルムズ海峡封鎖により止まれば、全量を代替することはできません。

 豪州は、日本の燃料用石炭とLNG輸入量のそれぞれ72%と43%を供給しています(図-3と図-4)。かつては労働争議が頻発した国です。

 労働争議はほとんどなくなりましたが、港湾設備などが故障すれば出荷量は落ち込みます。豪州が担っている数量を他国から調達することは、不可能なように思えます。

 エネルギー自給率の向上は大きな課題ですが、エネルギー政策では、いつも自給率が大きなテーマではありませんでした。


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