オリバー・ストーン監督は1991年にメガホンをとった「JFK」でも陰謀説を描いた。ニュー・オーリンズの地方検事が、大統領暗殺に関わった疑いで多く実業家や地元の顔役らを逮捕するという実際にあった話をモデルにして事件の別な側面を描き、やはりCIA関与を強くにじませた。
大統領暗殺をめぐっては、ストーン監督の作品だけでなく、映画、TVドラマ、ドキュメンタリーなどが数多く放映、出版されているが、ウォーレン委員会のオズワルド単独犯行説に疑問を投げかける陰謀説が少なくない。
実弟ロバート氏の次男が大統領選を荒らすか
大統領の実弟、ロバート・ケネディ氏は、兄の政権で司法長官をつとめ、事件後はニューヨーク州選出の上院議員として活躍した。
1968年3月、ジョンソン大統領が同年秋の大統領選への不出馬を明らかにした後、急遽、立候補宣言。6月に民主党カリフォルニア州予備選での勝利を受けてロサンゼルス市内のホテルで演説中、24歳のパレスチナ系移民の青年に至近距離から撃たれた。ケネディ氏の外交政策がイスラエル寄りだったことに不満を持ったというのが動機だった。
ロバート氏が順調に選挙戦を戦っていれば、兄弟大統領誕生の可能性は大きかったともいわれ、〝王朝〟両エースの相次ぐ暗殺は、ケネディ・ファミリーの悲劇の象徴といわれる。
父親が志半ばで亡くなった大統領選から半世紀、来年2024年の米大統領選に出馬しているのが、故ロバート氏の次男、ロバート・ジュニア氏(69歳)だ。環境保護を専門とする弁護士、23年6月に民主党予備選へ名乗りをあげたが、現職バイデン氏を退けての指名獲得は困難とみて、無所属でホワイトハウスを目指すことに方針転換した。
新型コロナウィルス感染防止のマスク着用に反対、ワクチン接種をナチス・ドイツの人体実験に例えて攻撃したことがある。
故大統領暗殺へのCIA関与説を公の場で言及したことなどもあって、民主党内では異端視されている。
来年の大統領選本選での当選はもちろん、いずれかの州で選挙人を確保することは困難とみられているが、選挙戦への影響を考えた場合、決して無視できない存在だ。
米のニュース・サイト「POLITICO」によると、10月末現在、全米での調査では、バイデン氏支持が39%、トランプ氏が36%であるのに対して、ケネディ氏も22%にのぼる支持を得ている。全米の18~34歳の若年層に限ってみれば、ケネディ氏38%で、バイデン、トランプのそれぞれ32%、27%を凌駕するという調査結果もある。
POLITICOは、来年10月の本選では、バイデン氏より、似通った保守的な主張を展開しているトランプ氏の票をより多く奪い、ミシガン、ペンシルベニアなど拮抗した結果が予想される州の結果、最終的には全米での勝敗に及ぶ可能性あると分析する。
現在も政界に多数輩出する「華麗なる一族」
ケネディ兄弟の父、ジョセフ氏は株への投資で膨大な資産を築き、フランクリン・ルーズメルト大統領を支援して、第2次世界大戦直前に、大統領から駐英大使に任命された。
故大統領のジャクリーン夫人はファースト・レディ時代から、美貌と才知で知られ、夫の死後も敬愛されたし、故大統領の妹の夫は英国出身、人気俳優のピーター・ローフォードでハリウッドとの接点もあった。
兄弟の末弟、エドワード氏は一家の地元、マサチューセッツ州選出の上院議員を1962年から2009年8月、在職中に亡くなるまでつとめた。キャピトルヒル(米議会)の重鎮として、ジミー・カーター大統領がドナル・ドレーガン氏に敗れた1980年の選挙では一時出馬が取りざたされた。
ファミリーの多くは政界で活躍、ジュニア氏の兄、その息子、エドワード氏の長男もそれぞれ下院議員、ジュニア氏の姉もメリーランド州の元副知事という錚々たる顔ぶれだ。故大統領の長女キャロラインさんは、オバマ政権時代に駐日大使として日本社会に接した。