ウクライナの反転攻勢がウクライナ南部でロシア軍を分断すると期待されていたが、これは簡単には現実化しないことが明らかになった。ザルジニーの発言は戦果を誇大に言いがちな大本営発表とは異なり、率直に苦境を認めている。
ザルジニーは技術面でロシアを凌駕する電子戦能力の強化など、技術面での飛躍が必要であると指摘している。電子戦能力は無人機攻撃実施と敵の無人機攻撃に対する防御のために必要であり、米国としてはできるだけの支援をするべきだろう。
米国の軍事関係者はウクライナ側のニーズについて、率直な話をしていると思われるが、バイデンがロシアによるエスカレーションを心配し過ぎることと議会共和党がイスラエル支援をウクライナ支援に優先させていることの二つの問題がある。この二つの問題を乗り越える方策を考える必要がある。
変わるロシアが戦争する理由
ロシアは来年度予算で国防費を70%増にし、国内総生産(GDP)の6%にするとしている。ロシアのGDPは国際通貨基金(IMF)統計で日本の約半分であるが、こういう資源配分はロシアが長期戦に備えようとしていることの証左であり、西側としてもそれに対応する必要がある。
ただ、ロシア国内においても、この資源配分には、不満が出てくることが考えられる。ロシア人の多くはウクライナの非ナチ化などといった特別軍事作戦の目的をよく理解していないと思われるからである。プーチン政権はウクライナ戦争の目的を、ウクライナの非ナチ化から西側が仕掛けてきたことに対する戦争とするなど、プロパガンダの方向性を変えてきている。
『戦争論』で有名な戦略家のクラウゼビッツは戦争における意志の重要性を指摘しているが、まさしくこれが当てはまる。西側は、ロシアをこの戦争の勝利者にはしないという意志をさらに強固にする必要がある。