2024年12月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月7日

 ワシントンポスト紙が「ウクライナはどのように膠着状態を打破できるか」(How Ukraine can break the stalemate)と題する社説を11月12日付けで掲載している。その主要点は次の通り。

(Zeki035/gettyimages)

 ウクライナの最高位の将軍ザルジニーはEconomist誌とのインタビューで、ウクライナはロシアと膠着状態にあり、「深く美しい突破はありそうにない」と明言した。この発言は、ロシアの侵攻に対するウクライナの戦闘を米欧の同盟国からの支援で強める新たな努力の引き金になるべきである。

 将軍の分析は冷静である。彼はウクライナとロシアは第一次世界大戦のようにどちらも相手に勝てない塹壕戦の「茫然自失」に到達していると言う。彼は、ウクライナは技術的な飛躍を必要とすると述べ、新しい航空戦力、電子戦能力、対砲兵能力、地雷除去技術の提供を求めた。

 軍事的に全てが失われたわけではないが、戦争は失速したとの感覚がある。

 安定的だが慎重な西側の武器の供与は、ゼレンスキーを失望させている。ウクライナは生き残るには十分な武器の供与を受けているが、勝つには十分でない。バイデンはロシアによるエスカレーションを懸念している。

 プーチンは長期戦に備えているが、これは外部からの供与と支持に依存しているウクライナにとって現実的な危険である。今月議会に出されたロシアの予算は来年の防衛支出を70%増やすとしている。プーチンは明らかに西側の忍耐とウクライナの物的・人的備えを消耗させることを希望し、トランプが再選され米国のウクライナ支援を続ける意思が弱まることを望んでいる。

 最終的にはウクライナは、戦場でお金と人命を犠牲にする意思のある敵、ロシアと交渉する必要があるとの現実に向き合わなければならないかもしれない。その時はまだ来ていないが、西側はもしその時が来れば、最善の取引を行えるような梃子をウクライナに与えるべきだろう。

 この梃子は、ウクライナが生き残り、ロシアの属国ではなく、欧州の繫栄する民主主義国として成長する機会を残すことを意味する。

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 この社説は、時宜を得た良い社説である。ザルジニー総司令官の率直なウクライナ戦争の膠着に関する発言が、この社説が言うように米国のウクライナ支援の強化につながることが望まれる。


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