2024年7月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月13日

 ミード教授が言う通り、第2次世界大戦後、米国が相対的に世界の平和を築いてきたというのは正しい。しかし、ハマスとイスラエルの衝突に際してイスラエルが多数のパレスチナの一般市民を殺害していることを批判する米国の若い世代に対して平和ボケしていると決めつけるのはどうであろうか。

 今回のガザの衝突以前から、シリア内戦、イエメン内戦、アフリカのさまざまな内戦等で無数の無辜の人々が亡くなっているので、ガザの衝突のみに米国の若者が反応するのはおかしい、という指摘であれば理解出来る。他方、ガザの衝突がこれだけ大きく取り上げられるのは、やはり、この問題がユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教という世界三大宗教の聖地エルサレムとも絡むからであろう。

米国が抱える本当の問題

 ミード教授は、「米国と世界の将来は、若い世代が、如何に平和が脆く、しかし、重要であるかを理解し、平和を守ることに立ち上がるかどうかにかかっている」と書いているが、当面、西側は米国を旗頭にして世界の秩序を維持する他無いが、米国の抱える問題は、若者の覚悟の無さではなく、トランプ前大統領に象徴される米国の孤立主義的傾向が強まりつつある事ではないであろうか。

 なお、ミード教授の論考からは離れるが、11月24日から数日間の休戦が始まり、ハマス側もタイ人を含めて24人の人質を解放した。一部のマスコミの間では、この休戦が糸口となって本格的な停戦に繋がるのではないかという希望的観測が広まっていたが、結局、激しい戦闘が再開された。

 イスラエル側からすれば、ここで停戦してしまえば、ハマスが再びイスラエルを大規模攻撃する可能性の芽を潰し損ねることになり、休戦を決定した閣議後、ネタニヤフ首相は、改めて「ハマスを殲滅する」と言明している。

 ハマス側は、イスラエル側がハマスの殲滅を作戦目標にしている限り、戦うしか選択肢はない。ハマスが解放した人質にタイ人を含めたのはグローバル・サウスを意識したためであろうか。

「特集:中東動乱 イスラエル・ハマス衝突」の記事はこちら
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