米バード大教授でウォールストリート・ジャーナル紙コラムニストのミードが、11月20日付け同紙に‘Gaza Is Gen Z’s First Real War’(ガザ戦争はZ世代にとり初めての戦争)と題する論説を書いている。要旨は次の通り。
ガザについてのニュースが若い世代に大きな影響を与えている一つの理由は、彼らは平和が当たり前の時代に育ったからであり、ガザの戦争が若い米国人達にイスラエル・パレスチナ紛争を教えただけでなく、戦争というものを教えたからだ。
第2次世界大戦後、米国人は安定した、少なくとも相対的に平和な世界秩序を作り上げることに全力を尽くし、それを守るためにいくつかの小さな戦争を戦ってきた。この秩序は、過去の世界大戦の規模での世界戦争の勃発を抑止して来たが、同時に何世代もの米国人が(戦争に対する)非現実的な世界観を持って育つことになった。つまり、若い世代にとり、戦争は過去の遺物となってしまった。
しかし、米国が主導する世界秩序は、海外で攻撃に晒されている。その結果、世界を戦争状態に陥れる無法と暴力が徐々に、時には突然に復活している。
イスラエル人とパレスチナ人は、このような非現実的な世界観を持っていない。そして、30万人以上のシリア人が10年間続いている内戦で命を落とし、何百万人ものシリア人が家を追われた。今年になって約10万人のアルメニア人も家を追われている。
今起きている内戦で600万人のスーダン人も同じ目に遭っているが、近隣でも大勢の無辜の民が殺害され、何百万人もの難民が発生するのが当たり前の事となっている。イスラム過激主義者達とロシアの傭兵のワグネルがサヘル地域に混乱と死をばらまいている。イエメン内戦では、37万人が亡くなっている。
ガザの出来事は、Z世代に戦争の恐怖というものを教えた。短期的には、ハマスは、苦しむパレスチナ人というプロパガンダでイスラエルを挫こうとするであろう。
しかし、米国と世界の将来は、若い世代が、如何に平和が脆く、しかし、重要であるかを理解し、平和を守ることに立ち上がるかどうかにかかっている。さもなければ、戦争は、彼らがスマホを通じて知り、スローガンを叫ぶだけの存在では無くなり、彼ら自身の命に関わって来るのである
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今回のハマスとイスラエルの衝突に際して、米国をはじめとして西側諸国でパレスチナ支援デモが広汎かつ大規模に起きたことは予想外であった。特に米国内のユダヤ系の若者達がパレスチナ支援デモを行い米国のユダヤ人社会の世代断絶をあからさまにしたのは印象深かった。
過去にユダヤ系米国人は、イスラエルの行動を無条件に支持するのが当然のことであり、依然として米国・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)等の伝統的なユダヤ人団体はイスラエルを無条件に強固に支持しているが、若いユダヤ系米国人は、必ずしもイスラエルを無条件に支持するという訳ではなくなっている。