2024年5月17日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年12月17日

基地周辺住民の騒音苦情に苦慮する軍関係者

 ちなみに春浦では、屋根にソーラー・パネルを設置した家屋がやたらに多く、また門扉やフェンスが新しい家が多い。不思議に思い上記のZ氏に聞くと「春浦は韓国軍のヘリコプター部隊の基地に隣接しており、騒音被害住民運動が活発になってきたので、政府は騒音補償として各家庭の希望に応じてソーラー・パネルまたは門扉・フェンスの設置を行っている」とのこと。

 Z氏は北朝鮮の脅威が感じられないと、基地反対運動が盛んになると苦笑した。

朝鮮戦争でマッカーサー率いる国連軍が仁川上陸作戦で上陸した地点。現在はタワマンが林立。干満差が最高10メートルにもなり連合軍は朝夕二回の2時間の満潮時に上陸。写真でも明らかなように現在でも干潮時には湿地帯が広がっている

韓国人は本音では南北統一は望んでいない?

 7月18日。上記の論山の灌燭寺の東屋で出会った韓国人の日本語教師の女性は「近い将来における北朝鮮との統一は韓国人の大多数は反対です。統一による韓国の財政負担が計り知れず、韓国民の生活水準が下がることを嫌っています」と南北統一には否定的であった。

 7月20日。韓国の男性と結婚した在韓20数年の日本人女性と出会った。彼女によると「フツウの韓国人と話していると、心から南北統一を望んでいる人はいません。フツウに生活している韓国人は自分の生活が第一であり、南北統一した場合に北朝鮮側を援助することで経済負担が増えることを恐れています。南北統一は韓国側に何もメリットがないと考えています」とのこと。

 7月22日。全州の韓国村展示館の大卒で20代半ばの女性は南北統一についてしばらく思案。

「正直なところ現実的問題として考えたことがない。メディアでも南北統一の議論はあまり聞いたことがなく具体的な情報もない」

 彼女の口ぶりから一般の韓国民にとり南北統一は視野にも入っていないように感じた。

知日派知識人の考える南北統一

 7月27日。ソウルから故郷の南原にUターンして事業をしている日本留学経験のあるK氏に南北統一について聞いた。

 K氏の理解では、韓国政府は南北統一について、さまざまなケース別に詳細なシナリオを作成している。当然ながらこうしたシナリオは極秘資料であり外部には出ない。

 金大中政権時代に平壌で金正日と会談して、南北共同宣言を締結した。金正日から南北統一国家としての“高麗連邦共和国”を打診されたが、金大中は断っている。北朝鮮の核をどうするか、在韓米軍をどうするか、などハードルが高すぎて北の提案にはとても乗れなかったとK氏は振り返った。

 現在の金正恩にとり、核・ミサイル開発が最優先であり、南北統一のメリットはない。従って北朝鮮の現体制が転覆しない限り南北統一の可能性はないというのがK氏の結論だ。

K氏が構想する“連邦共和国”

 仮に現体制が転覆したとしても、連邦制として南北二つの国家を維持することが現実的とK氏は考える。なぜなら西ドイツのように東ドイツを吸収して統一するのは韓国民の経済負担が大きく韓国民が猛反対するので不可能であるからだ。

 連邦制の下で徐々に相互交流を拡大していくべきという。まずは、北朝鮮のインフラを整備するために韓国、日本、米国、中国などが中心になり、国際基金を創設する。南北国民の交流については、例えば、韓国で不足する分野の技術者や労働者を北朝鮮から期限付きで受け入れる。

 連邦制の下で人的交流を徐々に拡大していけば、南北の経済格差が縮まり混乱なく最終的統一国家への移行の機運が醸成されるとK氏は予測した。

南北統一国家と日本の関係はどうなる?

 K氏の説明を聞きながら、仮に20年後に完全な南北統一国家が成立したらどうなるか想像した。おそらく統一国家は総人口8000万人となり人口1億人の日本にGDP規模でも迫りつつあるのではないか。その時は日本、統一朝鮮、台湾の3国で経済共同体をつくり、共存共栄を図るのが、日本にとりベスト・シナリオと思うが如何だろうか。

以上 第11回に続く

   
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