2024年12月22日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年11月26日

『2023.7.3~9.20 80日間 総費用26万円(優待航空券1万5000円含む)』

韓国人の被害者意識の歴史認識

 今回韓国を旅行して違和感を覚えたのは韓国における特異な歴史考察の視点である。歴史的出来事を考察するときに被害者的立場から考察・分析するのである。歴史的出来事を当時の世界情勢から分析するとか、客観的な第三者の立場で考察するのではなく、“被害を受けた当事者”として歴史を再構築するのだ。

 日本による朝鮮の植民地支配については、当時のアジアを分割支配しようとする欧米列強の帝国主義という世界の趨勢には焦点を当てず、専ら日本の朝鮮統合に至るプロセスを不当・不法と断じる。そして日本の植民地支配がどれだけ酷く惨いものであったか被害者としての立場から朝鮮近代史を語るのである。

 朝鮮戦争については東西冷戦のなかで米ソの対立により引き起こされた代理戦争であり、その結果朝鮮民族は分断されたという言説は数多の韓国人から聞いた。そして漁夫の利で大儲けしたのが日本であると必ず付言する。

秀吉の朝鮮侵略だけを調査する歴史研究所

 7月27日午前。全羅北道の南原ナムウォンを見て回った。最初に南原城址へ。この城を拠点に朝鮮軍・明軍及び地元義勇兵が秀吉軍を迎え撃ったが多大な犠牲者を出して敗退。次に犠牲者を祀った万人義塚へ。広大な敷地に博物館のような建物が博物館ではなく文禄・慶長の役について調査・研究している歴史研究所であった。

 研究室に入ると英語を話せる女性職員が対応してくれた。研究所では9人の専門家が文禄・慶長の役について研究しており彼女は助手として資料の整理などをしているという。秀吉の朝鮮出兵だけを扱う歴史研究所があることにいささか驚いた。

秀吉の朝鮮出兵の今日的な研究課題とは?

 歴史研究所は政府系財団により運営されている。研究テーマは例えば秀吉軍の侵略前と侵略後の農業生産高を推計して経済的にどれだけ被害を受けて回復にどれだけ時間がかかったとか。

 秀吉軍の悪行・蛮行についての研究も重要テーマらしい。例えば侵略した日本軍が戦功を証明するために倒した将兵の耳や鼻を切り取って塩漬けにして日本へ送ったことは日本側の資料でも確認されている。さらに戦功を水増しするため日本の侍は生きている農民の耳や鼻を削いで日本に送ったため日本軍が侵略した地域では耳や鼻がない農民だらけであったということが韓国側の調査で明らかになったようだ。

 万人義塚の展示館は当時準備中だったが特別に観覧させてもらった。いずれ整理して秀吉の朝鮮出兵の全容を展示できるようになるらしい。展示館には秀吉軍が日本に連れ帰った陶工が薩摩焼の祖となったこと、さらにその子孫が薩摩焼の名跡である沈壽官を代々継承していることも紹介されていた。

南原の戦いで戦死した1万人(大半は農民からなる義勇兵)を祀った万人義塚の正門毎年韓国陸軍儀仗隊が訪れてセレモニーをしている

南原文化院院長から聞く秀吉軍に拉致された一人の朝鮮女性の運命

 7月27日午後。南原市内の観光案内所で南原文化院の院長氏と出会った。彼は地元の高校の元校長先生という経歴。420年前に秀吉軍により連れ去られた一人の南原出身女性が高知県のお墓に弔われていることが高知新聞と南原文化院の共同調査で確認されたという活動成果を語ってくれた。

 この女性は秀吉軍に参加した小谷一族の侍に連れられて日本に渡り一族の領地である高知県で暮らしたらしい。亡くなると小谷一族の墓に葬られた。小谷一族の墓碑銘の調査で朝鮮南原出身という出自の女性の存在が確認された。関係者が高知新聞に女性の出自の確認を依頼。高知新聞が南原文化院に調査を依頼して出身地が確認できたという歴史秘話である。


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