「自分が来年の選挙で当選したら、すぐにロシアとウクライナのとんでもない戦争を終わらせる。前回大統領だった時に、プーチン(ロシア大統領)といろいろ話をした。彼は自分がホワイトハウスにいる間は、ウクライナに攻め込むチャンスはなかった。同様に、自分が大統領在任中、習近平(中国国家主席)も台湾に直接手を出さなかった。自分は過去何十年の間の歴代大統領の中で、ただ一人、戦争しなかった大統領だ。……プーチンも習近平もそして、(北朝鮮の)金正恩も個人的によく知っている。自分がもし、オバマの後に大統領にならなかったら、わが国と北朝鮮は核戦争をやっただろう。実際はそうはならなかった。金正恩とはうまくやってきた。それをフェイク・ニュースの既存メディアが非難したが、5000発の核爆弾を持った男と付き合って何が悪いというのか」(23年4月27日、ニューハンプシャー州マンチェスターでの集会演説)
「邪悪で腐りきったジョー・バイデン(大統領)は、わが国家安全保障上の重大な脅威だ。彼は中国やウクライナから何百万ドルという金を受け取ってきた。ジョー・バイデンの貪欲と犯罪性はわが国を第3次世界大戦に導こうとしている。われわれは、このとんでもない無能な男とともに、第3次世界大戦に向かいつつある。……自分が来年再選されたら、直ちに特別検察官を任命し、彼の過去の犯罪行為をあぶりだす。〝バイデン犯罪一家〟を徹底捜査させる。やつらが次回選挙でただ一人勝たせたくないのが、この私だ。しかし、私がホワイトハウスに戻ったら、バイデン・ファミリーは、他の犯罪者同様の代償を支払わされることになるだろう。その代償はとんでもなく高いものになるだろうが、公平な代価となる」(23年8月5日、自らがネットで流したビデオ・メッセージ)
「来るべき大統領選は、アメリカがユダヤ・キリスト教の遺産を粉砕しようとしているマルキスト、ファシストそしてコミュニスト、暴君たちに統治されるかどうかを決定づけるものになる」(23年9月15日、首都ワシントンの女性共和党支持者大会での演説)
「自分が勝利したら、腐敗し不誠実極まりない報道を続けるNBC・NEWS、 COMCASTその他のメディアを徹底的に捜査させる。彼らはわが国民主主義に対する真正の脅威であり、わが人民の敵である。これまでわが偉大なる国でやらかして来たことについて、フェイク・ニューズ・メディアは高価な代償を支払うべきだ」(23年9月24日、ネットメディアTruth Socialでの発信)
「わが国内にはびこるコミュニスト、マルキスト、極左主義者たちは、害虫(vermin)そのものだ。やつらはロシア、中国、北朝鮮以上にわが国にとっての重大脅威だ。(再選されたら)われわれは必ずや害虫どもを国内から一掃する」(23年11月12日、ニューハンプシャー州クレアモントの集会演説)
上記のような、常軌を逸した発言について、米国内の一部の識者の間では、「たんなる選挙目当てのアジ演説であり、実際に当選したらまともな路線に戻る」といった冷めた見方もある。
しかし、他方で、「Trump II」は「Trump I」とはまるで異なる〝暴走政権〟になるとの指摘も数多い。
独裁政権を作り出す2つの要素
第一に、その根拠として挙げられているのが、トランプ氏自身に沁みついた「独裁者志向」の体質だ。
トランプ氏は、かつて世界を震撼させた中国・天安門事件(1989年6月)について、当時、雑誌「Playboy」インタビューでコメントを求められた際、「暴動を起こした学生たちは、とんでもない連中だった。それを中国軍隊が鎮圧しておさまった。ものをいうのは力だ。わが国は今日、弱腰とみられている」と語ったことが知られている。
また、2016年大統領選の選挙期間中、国内反動分子を次々に処刑したイラクのサダム・フセイン大統領(当時)を「立派な指導者」と持ち上げたほか、「麻薬撲滅」目的で地方の密売業者、関係者数千人を殺害したフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(当時)による弾圧政策を絶賛したことも記憶に新しい。