現在、民主、共和両党の勢力構成は、下院(定数435)で共和党220、民主党213議席、欠員2、上院(定員100)で民主党48、共和党49、無所属(民主党系)3議席となっており、下院は共和党、上院は民主党がいずれも僅差で多数を制している。
しかしもし、来年大統領選と同時に実施される議会選挙の結果、トランプ氏再選に加え、トランプ支持派議員が多い下院で、共和党が引き続き多数勢力を維持し、さらに上院でも、共和党が議席を数議席でも上積みすることに成功すれば、次期トランプ政権へ立ちはだかる障害や歯止めがなくなり、米国史上前例のない「Trump II」独裁体制の出現が現実味を増してくる。
世界に及ぼす混乱
内政のみならず外交面での影響も、計り知れない。
まず欧州では、トランプ氏が、ロシア・プーチン専制体制によるウクライナなど対外勢力拡張に対峙してきた北大西洋条約機構(NATO)からの米国撤退意向を繰り返し表明してきており、もしそれが強行されれば、欧州安全保障体制が根本から揺さぶられることは必至だ。
アジア太平洋では、トランプ候補はかねてから在韓米軍縮小または、撤退の可能性に何度も言及しており、その決断いかんでは、日本を取り巻く北東アジア情勢に大混乱を引き起こしかねない。
台湾についても、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は、中国が武力侵攻した場合の米軍対応について、消極的姿勢を示してきており、不安を掻き立てている。
従来、米国の外交政策については、ホワイトハウスの意向のみならず、とくに米議会が果たす役割は無視できなかった。これまでにも議会は、トランプ前政権下のバランスを失する外交方針に対し、しばしば異議を唱え、危機を回避してきた。
それが、上下両院ともに共和党が多数を制した場合、トランプ氏にフリーハンドを与える恐れがある。
その意味で、来年こそは、大統領選とともに、議会選挙が決定的に重大な意味を持つことは間違いない。
現実に独裁政治の足音が、世界最強国米国にひたひたと迫りつつある。まさに米国有権者の良心が問われようとしている。