2024年11月23日(土)

インドから見た世界のリアル

2024年1月4日

モディ首相のタクトに影響する総選挙

 インドは今年の春、総選挙を迎える。現在、下院の過半数はモディ首相率いるインド人民党(BJP)が握っており、上院も意見の近い政党との協力をするだけで過半数を獲得できる状況にある。

 モディ首相は、比較的自由に政策を決めることができる状態にある。しかし、逆に言えば、状況が変われば、インドの政策は変わるかもしれない。

 インドの世論調査を見る限り、モディ首相個人の人気は揺るがないものがあるが、与党BJPの人気はそれほどでもない。インドは広い国なので、地方に行けば、地方に有力な政党がいる。だから、最終的にBJPは過半数とることができるのか、さまざまな予測が出ている。

 もし仮に、モディ首相もBJPも圧勝するならば、現在の政策は引き継がれることになろう。もし、BJPが過半数をとれず、連立する場合でもモディ政権が維持されるなら、政策的には継続する可能性がある。ただ、現在見せているようなモディ首相の実行力は落ちるだろう。

 1990年代のバジパイ政権はBJP主導の連立政権だった。そのころに近く、連立相手に配慮しながらの政策決定になろう。

 一方、野党が連立を組む場合、インドの政治は大きく変わる可能性がある。野党の場合、強力なBJPを倒すために、政治的な意見が違ってもいいから手を組むことになる。そうなると、右派から左派までいろいろな意見が集まった、「烏合の衆」的な政権が樹立されるかもしれない。

 2014年にモディ政権が成立する前、インドの政治はまさにさまざまな意見の政党が含まれた連立政権だった。それは実行力に反映された。

 特に、米国との防衛協力関係には、常に共産党などの左派政党が反対し、思い切った政策ができなかったのである。米国との防衛協力を進めるために、大きく3つの協定が協議されていたのであるが、交渉開始は2000年代初めなのに、15年近く交渉は進まず、成立したのはすべて、14年にモディ政権が成立してからだ。

 24年の選挙で野党が勝った場合は、そのような時代に戻る可能性がある。左派やロシアとつながりのある、いわばQUAD強化に反対する政党が連立に入る可能性は、野党の連立政権の方が、右派のBJP主導の政権に比べ、高いだろう。米国や他のQUADとの協力関係は、進まない時代になるかもしれない。

軋轢の火種がくすぶる米国の選挙結果

 24年のインドの外交姿勢に大きな影響を与える要素として、やはり米国大統領選挙がどうなるか、その予測が影響を与えることになるものと思われる。

 過去の経緯を見ると、一見すると、米印関係は、米国政権が共和党であろうと、民主党であろうと、関係ないようにみえる。実際、米印関係は、民主党のクリントン政権、共和党のブッシュ政権、民主党のオバマ政権、共和党のトランプ政権、民主党のバイデン政権と、一貫して強化されてきた。中国からの挑戦に対抗するためにインドと組む必要があるという認識は、米国の共和党・民主党を問わないものだから、と考えられる。

 しかし、細かな点を見ると、火種がくすぶりつつある。特に、米国では、インドの民主主義が後退しているとの指摘がでている。また、西側各国に潜伏するシーク教徒過激派指導者に対する暗殺にインド政府が関与しているという疑惑も取り上げられるようになっている。

 このような火種に対する対応は、米国の政権が共和党、民主党によって異なるものになるかもしれない。民主党の方がイデオロギー的な色彩が強く、共和党の方が防衛問題重視の傾向がある。民主党政権では、インドの民主主義、シーク教徒過激派暗殺の問題がよりクローズアップされるかもしれない。


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