2024年11月23日(土)

プーチンのロシア

2024年1月17日

 ドイツのように宛先を「大統領」と「首相」の2人にしている国もあるほか、国ごとのメッセージと分けた個人宛欄には、プーチン氏と良好な関係を構築した安倍晋三元首相、ゲアハルト・シュレーダー元独首相、シルヴィオ・ベルルスコーニ元伊首相ら各国VIPの名前も挙げている。

 メッセージの単語数の比較から、侵攻開始前とその後でどう変化したのかを示したい。

 侵攻前の20年12月30日と21年12月30日の賀詞メッセージ単語数の上位国には、現在は対露制裁国に加わっている欧州の国も含まれている。

 20年のベスト5を挙げると、1位中国(145語)、2位カザフスタン(106語)、3位イタリア(104語)、4位インド(102語)、5位トルコ(101語)。

 21年のベスト5は、1位中国(150語)、2位ベトナム(119語)、3位イタリア(114語)、4位インド(110語)、5位カザフスタン(109語)。

 それぞれ、微差に止まる単語数の増減やランクの上がり下がりがあるものの、上位の顔ぶれは変わっていない。ランキング下位国は欧米諸国が占めており、この状況にも変化はない。

 アジア方面に目を移すと、この2年、文在寅大統領(当時)宛だった韓国はいずれも13位(20年82語、21年86語)。日本は韓国より下に位置し、菅義偉首相(当時)宛の20年が61語で28位。21年には宛先が岸田文雄首相となり、16位にランクアップして、語数も85語に増えた。

 岸田首相は就任直後の21年10月7日のプーチン氏の誕生日に電話を入れて挨拶をしたことがプーチン政権内で評価されたとみられ、日本との今後の関係発展への期待を賀詞に含ませたことがうかがえる。

 興味深いのは、20年と21年の送付宛先数が42と変わらないことだ。ローマ法王や国連事務総長などのVIPが含まれるため、単純に国数の増減を比較することができないが、21年に増えた国はモンゴルのみ。米国については、20年に大統領任期終了が近かったドナルド・トランプ氏と次期大統領のジョー・バイデンの2人に賀詞を送っている。

侵攻後に変わった上位の顔ぶれ

 ところが、大規模侵攻開始後10カ月が経った22年12月30日の賀詞メッセージでは、状況が一変した。

 ランキング上位は1位中国(126語)、2位インド(105語)、3位キューバ(104語)、4位トルコ(102語)、5位カザフスタン(101語)。これらの国々は、欧米主導の対露制裁網に加わらず、エネルギー分野や食糧分野での取引を継続し、「プーチンの戦争」を間接的に支えた。キューバはソ連時代から続く伝統的な友好国でもある。

 送付相手は22と侵攻前の21年に比べ約半数に半減した。

 上位はCIS諸国で占められ、欧州では9位セルビア(85語)、22位ハンガリー(39語)の2カ国のみ。ブチッチ大統領(セルビア)やオルバン首相(ハンガリー)はいずれもプーチン氏と築いた個人的な関係をにじませ、欧州連合(EU)の対ウクライナ支援で足並みがそろわぬ原因となっている。

 一方、22年には南米の2カ国、ニカラグアとボリビアが新たに送付先に加わった。両国はともに反米路線を歩み、ロシアとも武器取引や自国の共同資源開発を行い、関係が深い。22年に行われた国連の対露非難決議でも、賛成国側にまわらず、投票を棄権している。

 23年の賀詞メッセージにもプーチン政権の「秋波」度合いの微妙な変化が読み取れる。


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