東電が抱える課題は、柏崎刈羽原発に係る問題だけではない。最大の問題は、福島第一原発の事故後の賠償や除染、汚染水への対応、1~4号機の廃炉、5・6号機の後利用などである。
東日本大震災の大地震や大津波を乗り切った福島第二原発については、茂木敏充経済産業相が「県民の心情を考えると、他の原発と同列には扱えない」と発言したが、福島の復興や東電管内の電力低廉安定供給の必要性はもちろんのこと、エネルギー安全保障を真剣に考える国家的視点に立てば、再稼働に向け環境整備をしていくのが政治・行政の役割だ。
東電管内だけでなく、広く国全体の原発運営の適正化と電力の低廉安定供給体制の再構築のためにはどうすればよいか。東電問題の解決への踏み出しは、国全体の電力政策と原子力政策の新たな第一歩に繋がる。その柱は、東電の分割・再編成と、それ以降の所要財源や値下げ原資の捻出策である。
東電の今後
事故処理は国営化を
9月14日付の日本経済新聞や毎日新聞は、東電・原子力改革監視委員長で、米原子力規制委員会元委員長のデール・クライン氏が、福島第一原発の廃炉・除染作業は、専門の別会社を作るべきとの考えを示したと報じた。
日本経済新聞によるとクライン氏は、「『長期間の作業に従事する人材の確保が必要』と述べ」、「米スリーマイル島原発事故の処理体制を例に挙げ、セキュリティーや環境保護の観点から専門的な作業員が継続して従事することが重要と指摘。『専任で廃炉・除染を担う組織をつくった方がメリットが大きい』と話した」と報じられている。
私は本誌13年4月号の拙稿「発送電分離の虚妄 電力会社はむしろ大合併を」で、クライン氏と同じ方向の提言をした。これを実行に移す際に問題になるのは、電気事業を担う部門(電気事業部門)と、廃炉・除染・汚染水対策など事故処理を専業に担う部門(事故処理事業部門)について、事業活動に要する資金手当も含めて、それぞれどのように運営していくかである。
原子力損害賠償支援機構法に基づき、東電には既に1兆円の資本が注入され、加えて3.8兆円の賠償支援のための公的資金が投入されている。今後の分も合わせて、総額5兆円の公的資金枠が設定されている。更に、3大メガバンクを始めとした銀行団が2兆円の緊急融資を無担保で行っている。これほど巨額かつ特異な性格の公的資金及び民間資金が注ぎ込まれていることを踏まえると、いわゆる“破綻処理”は到底想定できない。