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2013年10月21日

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石川和男 (いしかわ・かずお)

政策アナリスト

1965年生まれ。89年東京大学工学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。電力・ガス自由化や再生可能エネルギー開発振興、環境アセスメントなどに従事。2007年に退官後、内閣官房企画官、内閣府規制改革会議専門委員などを歴任。現在、社会保障経済研究所代表。著書に『原発の正しい「やめさせ方」』(PHP新書)など多数。

 この点に関して付言しておくと、“東電破綻処理”を叫ぶ向きは今も根強くある。その気持ちも理由もよくわかる。だが、東電を破綻させないことが最善だとの政治・行政判断をした上で原子力損害賠償支援機構による1兆円の資本注入を行ってまだ間もないことだけからも、東電破綻処理はないと見るべきだ。

 銀行団による2兆円の無担保融資が回収できなくなることが東電破綻処理を阻んでいる、との意見もある。確かにそういう側面もあるかもしれないが、最も本質的な部分はそれとは違う。銀行団による巨額融資の焦げ付きよりも、東電破綻処理によって国全体の対原子力事業向け金融に係わる信用基盤が今以上に揺らいでしまうことを回避する、との強い政治判断があると考えるべきだ。その判断は決して誤っていない。

 いずれにせよ、今後の東電の在り方については、一般的な市場ルールを適用させない特別な行政領域で処理をする路線で引き続き進んでいくことが有力である。その範疇で考えた場合、現実的で合理的な具体策とはどのようなものか?

 東電は現在、実質国有化されている。『国有化東電』が、事故処理事業部門と電気事業部門を同時に運営している。安倍晋三首相は福島第一原発事故の処理について「国が前面に出る」ことを表明した。事故処理事業部門は、東電から切り離し、政府・経産省の直轄事業としていくことが望ましい。

 このまま東電の中で事故処理を続けると、東電に対する国民や一部大手マスコミの処罰感情論によって「何をやっても批判が噴出する」状況が続く。これでは優秀な人材を集めることはできない。また、現在の中途半端な「国有化」状態では、汚染水問題を見ればわかるように、政府は都度都度の不都合は東電の責任に帰すことができ、資金的手当ても将来の東電の需要家にツケ回しできる。責任も財政負担も感じなくて済む政府が、本気で「前面に出る」ことはない。

 福島第一原発事故処理は、スリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故などの類例はあっても、直接的に参考になる先行事例がない人類未踏の事業である。資金や人材などのリソースへの不安が先に立つような状況は極力回避すべきである。そのためには東電からの切り離しに合理性がある。

 9月22日付の各紙報道によると、自民党・東日本大震災復興加速化本部長の大島理森前副総裁が、安倍首相に対して、福島第一原発の廃炉事業を進める別会社を設立して東電から事実上分社する案を検討するよう提言したとのことだ。記事によると、分社案のほか、「廃炉庁」を新設して国が前面に立って廃炉事業を担うことや、廃炉事業を担う独立行政法人を設立する案も考えられているようである。

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