2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年1月23日

 ネタニヤフの国内での人気は急落している。イスラエルの最高裁は彼の議論のある司法改革を拒否した。イスラエルのためにも、彼は去らねばならない。

 10月7日のトラウマを考えれば彼の後任者は安全保障にソフトではないだろう。しかしより賢明なイスラエルの指導者ならば、ガザでの飢餓、無政府状態、終わりのない占領、米国の支持の溶解はイスラエルを安全にしないことを理解するだろう。

*   *   *

 上記の英エコノミスト誌の社説は、イスラエルのネタニヤフ首相の退陣を呼びかけたものであるが、基本的に賛成できる論旨であると思われる。

 ネタニヤフ首相は、自分の汚職での起訴を避けるために、イスラエル内の極右勢力である「ユダヤの力」や「宗教シオニズム」に迎合し、首相の座にとどまっている。そして、現在では、ガザでの戦争を指導している。

 しかし、そのガザでの戦争の戦後をどうするのかについては、ガザを無政府状態にするか占領し続けるか以外の選択肢を示していない。また、最も妥当なパレスチナによるガザ統治を拒否している。戦争をどう終わらせようとしているのか、よくわからない。

 ネタニヤフがこういうことでガザ戦争を続け、地域戦争を引き起こし、石油危機の再来やその他の混乱を招くようなことは、何としてでも阻止すべきことであろう。

 バイデン政権もブリンケン国務長官を中東に派遣し、ネタニヤフの行動の是正に乗り出しているが、イスラエルには優しい言葉ではなく、強い言葉ではっきりと言わないといけない。友人としての助言ではなく、強い圧力をかける段階に至っていると思われる。

問題はいかに退陣させるか

 Economist誌はイスラエルにおいて知識層を中心によく読まれているので、この社説はイスラエル国内でもそれなりの影響力を持つと思われる。

 しかし、ネタニヤフが辞任することは考えがたく、この戦時下で選挙をするのも適切とは思われず、ネタニヤフ政権の終わりに至る道筋は現段階では描き切れない。イスラエル国内でのネタニヤフ首相の人気は、この社説が言うように急落しているが、彼を追い出す適切な手段はなかなかないように思われる。

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