歴代政治家が残した対外債務の重荷
日本外務省データでは2022年のスリランカの人口は約2200万人、1人当たりGDPは3474ドル(約49万円)。手取りの平均月収が2万5000円程度と推測されるが現地の人々から聞いた話と一致する。
2022年の輸出総額は約131億ドル(繊維・衣類・ゴム製品、紅茶・ゴム・ココナツ)。輸入総額は183億ドル(石油・繊維原料・食品・機械など)。2022年度は52億ドルの貿易赤字。2005年以降貿易収支は毎年50~100億ドルの赤字である。
2023年6月の対外債務は365億ドル、そのうち二国間債務は109億ドルで、内訳は中国46億ドル、日本24億ドル、インド16億ドルとなっている。2023年秋には債務再編で債権国・国際金融団と合意したので対外債務の一部は減免されたが、それでも経済再建は極めて厳しいというのが現実であろう。
スリランカの現状に絶望して祖国を捨て海外移住を目指す優秀な人材
医師・看護師・技術者など国際的に通用する資格を持つ人々は薄給のスリランカで働くことを放棄して海外移住を目指す。コロンボの国立病院の院長によると英国などに移住する中堅・若手医師が後を絶たず国立病院・公立病院の医師の定数不足から政府は医師の定年を昨年から2年延長したという。
英語の堪能な看護師も英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドなどに続々と移住している。これらの国では英語による試験(オンライン方式が多い)をパスした外国人看護師に対して自国民と同一賃金を保証しているからである。ちなみにハンバントタ港(例の中国の債務の罠により99年間中国が“租借”した国際港)近くの看護学校では生徒の過半数近くが男子であった。彼らは全員が海外移住目的で看護学校に通っていた。フィリピンの看護学校でも男子生徒から同様の志望動機を聞いたことを思い出した。
海外移住を目指して受験戦争を勝ち抜くべく必死な子供たち
筆者は各地の公立学校・私立学校・インターナショナルスクールを訪問して校長・副校長から話を聞いた。優秀な生徒たちが将来の海外移住を目標に理科系・商学系大学を目指し必死に勉強している様子を目の当たりにした。全国統一テストである小学5年時の奨学金試験、高校受験資格試験、大学受験能力試験を勝ち抜くべく補習・塾通いをしている。各段階で選抜されるため最難関の国立大学(全額無償)は極めて狭き門である。
ヌワラ・エリアの紅茶農園労働者一家の16歳の少女はドイツの財団の奨学金を得て高校入学資格試験に向けて裸電球一つだけの土間で勉強していた。幼い弟妹の世話をしながらである。国立コロンボ大学医学部を卒業してカナダに移住し、将来親弟妹をカナダに呼び寄せるのが彼女の夢だった。