2024年5月17日(金)

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2024年2月9日

実家なんとかし隊とは?

 しかしここまでを見てきて、私は思った。どうして、この体操にはたくさんの団体や組織が関係しているのだろうかと。

 出てきた名前を並べるだけでも、「JKK東京」「コミュニティカフェななつのこ」「ななつのこde運動し隊」「実家なんとかし隊」「世田谷区」「保健センター」「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」と、7つにもなる。しかもその後、聞いたところでは「ななつのこde運動し隊」は、世田谷区の社会福祉協議会の「ふれあいいきいき・サロン」グループに登録して運営や広報活動について支援を受けているというので、社協も加えるとさらに増えて8つになる。もっとあるのかもしれないが。

 ではどうして、この体操にはたくさんの団体が関係しているのだろうか。

 その答えになるはまだわからないが、それはキーマンとなる「実家なんとかし隊」の代表・柴﨑さんの動きによるところが大きいと思われた。さらに言うと、いろんな要素が絡んでいることが、会をスムーズに運営させ、かつ、持続させている要因になっているとも感じた。

 関係を紐解いていこう。

 そもそも柴﨑さんはこの地域の住民ではなく、沿線に住んでいる方だ。この地域との縁は、正にコーシャハイム千歳烏山の成り立ちと関係しているという。

「実家なんとかし隊」の柴﨑さん(左)と「ななつのこde運動し隊」の森和彦さん

 さかのぼることおよそ10年前、2014年にコーシャハイム千歳烏山の「サ高住」棟ができる少し前に、柴﨑さんの実家の父親は、認知症で要介護状態になった。そこで「サ高住」棟が出来たときに、柴﨑さんは茨城県にあった実家を片付けて、父親の入居を決めた。それと同時に、同じく募集されていた「コミュニティカフェななつのこ」のスタッフに応募。オープニングメンバーとなった。父親の介護に通うのに、都合よかったからである。

実家なんとかし隊 (jikkanantokashitai.com)

 また、その際に、実家に処分が必要な「こもごも」が出てきたために、翌年の2015年に柴﨑さんは非営利団体の「実家なんとかし隊」を作った。

 ちなみにJKKによると、コーシャハイム千歳烏山はJKKが1956~1957年に建設し管理していた公社賃貸住宅「烏山住宅」(注・都営住宅ではない)を、老朽化に伴い2007年度より建替え事業に着手し、「コーシャハイム千歳烏山」として順次建替えを行ったものである。

 その後、結局、柴﨑さんは父親を見送ることになったのだが、「お世話になったこの地域に恩返しがしたい」と考えて、ななつのこを運営している一般社団法人の理事の一人になった。

 本格的にななつのこの運営に携わることになった柴﨑さんは、他の理事達と一緒にどうすれば多世代が本当に交流できる場を作れるかを真剣に考えた。そして、「カフェをいつでも行ける居場所にするため常に開けておくこと」や、「イベントを多く行って、まずは足を運んでもらうこと」「多世代に気に留めてもらえるよう、子ども向けやお母さん向け、若者向け、高齢者向けなど様々な層を対象としたイベントを考えること」を意識して行った。

 一方、実家を処分する必要に迫られて立ちあげた「実家なんとかし隊」では、「実家じまい」にまつわる仕事だけでなく、介護のニーズやシニア世代のニーズ全般にも対応していくようになり、その流れで社会福祉協議会や、地域包括支援センター(世田谷区では、「あんしんすこやかセンター」名称)や世田谷区の介護予防・地域支援課などと縁ができ、かつ、そういうニーズのある個人や団体に対応する必要性から高齢者福祉や地域活性に関する助成や支援にも詳しくなっていった。

 そんなある日、ななつのこに近所の人たちと居合わせた際、健康診断で医師に運動を勧められた「運動し隊」代表の森さんが、「医者に運動するように言われた」と茶飲み話で言い出したところ、同席していた80代女性が「私も運動はしたい」と賛同。ただし、「自宅で一人ではできないし、既存グループには入りづらい」「遠くまで通うのは無理だが、新しく会を立ち上げる気力は年齢的にないし、時間もない」。また、「運営することになったとしても健康的に続けられるかわからない」という。

 そこで柴﨑さんは、簡単な体操を地元で定期的に行うために必要な情報を2人に伝え、さらにグループを作るための作業を手伝うことになった。だから、健康体操は「ななつのこde運動し隊」の活動ではあるものの、運営は「実家なんとかし隊」が補助するようになったのだ。

 これが1年前の2023年2月のことで、その後、実家なんとかし隊が助成の申請を手伝ったり、公的機関などに人的支援のお願いをしたりしながら、4月から月に1回開催する計12回の体操スケジュールを作った。


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