とくに佐賀でのパフォーマンスに納得ができなかったという羽生さんは、横浜での公演を迎えるまでに、これまで以上にギアを上げ、自らを追い込んできたという。
羽生さんは会場内でマイクを握った際、「ここまでくるのに、佐賀から1カ月弱ですかね。本当に休みなく、久しぶりに筋トレとかを一日6時間くらい、ほぼ毎日やってきて、やっとここまでくることができたなと思います」と語っていた。
囲み取材ではその詳細について、「例えばですが、朝起きて1時間、ストレッチとトレーニングを行います。そして、練習へ行って3時間、トレーニングとスケートして、帰ってきて、また1時間半トレーニングをして、寝る前にも1時間イメトレという日々をずっと繰り返してきました。(競技者時代に)試合をやっている時よりも練習をしたり、イメトレをしたりしてきました」と打ち明けた。
魂を全て注ぎ込む、その先には
競技という枠を飛び出し、プロスケーターになってなお、なぜこんなにもストイックに追い込み、自らを高めることに妥協がないのか。源泉となっているものは何か――。
その答えの一つが、入手困難とされるチケットを求め、会場の内外からでも絶えず応援をしてくれるファンの存在だった。
会場のマイクパフォーマンスで羽生さんはこう話している。
「皆さんが観たいと思ってくださるから、僕はこうやって滑らせていただいて、皆さんが集まってくださるからこそ、僕は頑張ることができます。皆さんの中には、もしかしたら今回しか来られない人もいるかもしれない。だからこそ、僕自身も毎回、演技をしているとき、いつ終わってもいいと思えるくらい、魂を置いて滑っています。
毎回、魂をぶちこんでいます。なので、一粒の砂くらいでもいいので、きょうの感情がなにかしら、皆さんの中に残ってくれたらいいなあと思っています」
29年の人生のほぼ全てをフィギュアスケートに注ぎ、打ち込んできた。競技者であっても、プロに転向しても、常に高みを目指す自分と向き合ってきた。
自らの演技を楽しみにしてくれる観客に、想像以上の期待で応えるために、華やかな舞台とは対照的な日々のリンクで自らを追い込む。そこに一切の妥協はない。