本番ではその全てを出し切ってなお、自らの魂を注ぎ込む。だからこそ、スタミナが切れて、息が苦しくなる。ぜんそくの持病があるのに、お構いなしに削りきったスタミナをさらに絞り出して、滑り続ける。〝一期一会〟の会場で、最高のパフォーマンスを見せるためだ。
「オリンピックを超えた」
この日も、「見てくださる方々が、本当にうれしそうな顔をしてくださっていたので、本当に頑張ってよかったなって思っています」と感想を漏らしたように、この思いこそが、圧巻のパフォーマンスを呼び込む原動力となっているのだろう。
そして、羽生さんにとっても大きな達成感が得られた。それは、囲み取材で発した次の言葉に凝縮されている。
「ある意味、自分の中でオリンピックを獲ったというぐらい、練習してきたことが達成できました」
早くも「続編」「再編」を期待する声が上がる。「まだまだ進化し続けたいなと思っています」という飽くなき向上心は、きっとさらに高いレベルでのパフォーマンスへとつながっていくだろう。