特に、日本の大企業は社内制度を整えることには長けています。例えば、男性育休の制度を導入している企業は徐々に増えているし、そもそも日本は世界的に見ても「長く」育休をとることができます。制度は充実しているのです。それにもかかわらず、「活用しない/できない」のはなぜか。ここに潜むのが「社員個人の意識」であり、「男性は長く育休をとるべきではない」というアンコンシャス・バイアスです。
これが如実に現れた調査もあります。
HAPPY WOMANが実施した調査では、コロナ禍における「女性の家事負担率」の平均は70%であったほか、テレワークで在宅時間が増加した場合でも「家事・育児」における女性の負担は高いままでした。夫婦間での理想の家事分担率について、多くの男性が「男性3割、女性7割」だと考えていることも分かり、「家事は女性」というアンコンシャス・バイアスもまだまだ根強いことが判明しました。職場の制度が整い、環境が変わっても、「家庭内におけるジェンダー平等」が実現されなければ意味がないのです。
二つ目の課題が女性の「自己肯定感」です。政府は東京証券取引所の最上位「プライム市場」に上場する企業の役員について、2030年までに女性の比率を30%以上にすることを目指しています。これ自体は歓迎すべきですが、そもそもは2020年を目標にしており、これが先送りされた結果でもあります。
この背景にあるのが、女性の自己肯定感の低さだと考えています。内閣府の調査でも明らかになっていますが、HAPPY WOMANの調査でも男性に比べて女性の方が、自己肯定感が低く、有職女性の3人に1人が「自分に自信があること(もの)がない」と答えました。こうした状態では「部下を持ちたい」「出世したい」「お金を稼ぎたい」と思わないことも自然だといえます。
幼い頃からの教育や親世代からの刷り込みなどが影響していることも考えられます。「協調」や「共感」「譲り合い」といった価値観を育み、競争や対立を避ける日本らしい文化・教育は一概には否定できないものの、「謙虚すぎる」「謙遜しすぎる」ことが自己肯定感を高めることへのハードルになってしまう側面もあるのかもしれません。
男女平等が実現すれば
みんながハッピーになる
声を大にして伝えたいのは、「ジェンダー平等が実現したらみんながハッピーになる」ということです。ジェンダー平等は男性に不利益を被らせることではなく、「真の多様性」を追求することです。
現在、多くの組織が「女性活躍」「多様性」を重視していると訴えていますが、これは理にかなっています。これらの前提にあるのが「ジェンダー平等」であり、それを実現すれば、少なからず男性の肩の荷が下りる側面もあるでしょうし、女性の意見も踏まえられた製品・サービスの方が、より多くのユーザーにとって使いやすいものになっているはずです。男女平等の先にあるのは、国民の「幸せ」であり「ウェルビーイング」なのです。