まず、「①よく見られる集落と見分けがつかないような無住集落」の好例を三つ紹介する。
第一は、比較的条件のよい場所にある白山市の無住集落である(写真②)。白山市役所からの距離は約27キロメートルであるが、道路の状況は、農村の感覚では良好であり、拍子抜けするほど容易に到達できる。写真をみれば一目瞭然であるが、外見だけで「ここが無住集落」とわかる方はいないと思われる。
第二は、比較的隔絶した場所にある小松市の無住集落である(写真③)。小松市役所から約30キロメートル、標高約600メートル、積雪が比較的厳しい場所に位置している。冬季以外は車で到達できるが(冬季は道路が閉鎖)、道幅が狭い区間が目立つ。とはいえ、冬季以外は、写真のような明るい雰囲気が維持されている。
第三は、有人のパン屋がある金沢市の無住集落である(写真④)。よく見られる集落であっても、「山間地域に有人のパン屋」というのは珍しい。金沢市役所から約12キロメートルという有利さはあるが、高い活力を維持している無住集落といえる。
筆者は、秋田県と石川県を中心に、これまで100カ所以上の無住集落を調査したが、そのような無住集落は別に珍しいものではない。国勢調査の常住人口にカウントされない人々(普段から当該集落に住んでいるとはいえない人)が集落を維持している、ということである。なお、常住人口ゼロといっても、限定的な居住が見られることはある。
ただし、集落維持の担い手の多くは、元住民やその縁者である。「農村の価値に気がついた都市の住民がボランティアで」という感じではない。
多種多様な姿を見せる
無住集落
次は、「②よく見られる集落とは言いにくいが、何らかの形で活用されている無住集落」の好例を二つ紹介する。
第一は、キャンプ場になった加賀市の無住集落である。もとの集落の面影は、あまり残っていないが、集落に関する石碑と案内板が整備されている(写真⑤)。