しかし、アフリカを湾岸諸国の野心と競争の舞台とすることは、大きなリスクを伴う。湾岸の王国独裁国家は、アフリカの民主主義の擁護者でも人権の擁護者でもない。UAEは軍閥を武装させ、混乱を広げ、腐敗したエリートたちに避難所を提供する危険な国である。
そのもっとも典型的な例がスーダンであり、UAEが大量虐殺を行う民兵組織である即応支援部隊(RSF)を支援し国軍と内戦を繰り広げており、約2500万人が援助を必要とする世界最大の人道危機となっている。UAEの友人には、RSF指導者のダガロ、リビアの軍閥ハフタル、チャドのクーデターで権力を握ったマデビ、そしてエチオピアで血なまぐさい内戦を繰り広げたアビイなどがいる。
石油と天然ガスの富は、UAE、サウジアラビア及びカタールが何年にもわたって魅力あるパートナーであることを意味する。しかし、スーダンとリビアから広がる騒乱の波紋は、価値観を共有しない国々にアフリカ政策を委託することの危険性を西側諸国に警告するものだ。そしてアフリカ諸国は、自らが他国の地政学的ゲームの駒として使われることのリスクを知るべきである。
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UAEの中国、米国、EU超えの可能性
この社説は、アフリカに進出する側から状況を分析し、その問題点を論じた意味で参考となる。
まず、湾岸諸国のみならずインド、ブラジル等の新興市場国がアフリカに乗り出していることは、アフリカにとって結構なことである。
その中でも、この社説が紹介するア首連、サウジ、カタールのアフリカへの関心の高まりは、注目に値するものだ。インフラ投資、農業、鉱業、更に再生可能エネルギーなどの分野への積極的な投資は、22年以降、UAE単独で中国、EU, 米国を上回る可能性もあるのではなかろうか。
また、急速に貿易関係も拡大している。同時に大使館の増設などの外交面での関係緊密化が急速に進んでいる。
このような湾岸諸国とアフリカとの急速な関係緊密化の背景には、湾岸諸国側には、脱石油化を念頭にアフリカの将来性への期待、多極化する国際社会における影響力の拡大といった戦略的考慮があるが、そのような動きを後押しする太古からの歴史的な繋がり、地理的近接性、イスラム教を通じた連帯や文化的な親和性などの基礎的な要素もある。