アフリカ側から湾岸諸国の投資が歓迎される理由としては、潤沢な資金、意思決定の迅速性、欧米のような上から目線でないことなどが指摘されている。これらの要素を勘案すると、関係緊密化の傾向は一時的なものではなく持続性があり、まさにアフリカの在り方を変える可能性があろう。
負の面の要素は、この社説が後段で触れているアフリカの独裁政権や一方の紛争当事者への支援といった特に政治的介入とアフリカの支配者層との好ましくない癒着である。特にUAEが資金や武器面で支援しているとされる、リビア、エチオピア、チャド、スーダンの政治指導者は、人権尊重や民主主義とは対極的な存在である。
また、経済的繁栄を謳歌しているドバイの裏の面として、違法採掘された金の流出先となってこれら指導者の資金源となっているとの疑いや、ドバイ進出のアフリカ企業数が26,000を超えるというのも驚きであるが、ドバイの不動産がアフリカ・エリートの蓄財に活用されているとの報道もあり、このような面でのアフリカのガバナンスの低下が懸念される。
湾岸諸国への関与の必要性
アフリカの安定は欧州をはじめ世界の安定や発展にとり重要であり、テロの温床となるイスラム過激派を押さえ、政治的安定や民主主義、健全な経済発展に障害となるような中国の経済進出やロシアの軍事的影響力拡大に対抗する必要がある。他方、サヘル地域等では、フランスの影響力が駆逐され、マリ、ブルキナファソに続き米国の重要拠点であったニジェールもクーデターにより、米国からロシアとの協力強化に舵を切ろうとしている。
このような状況において、西側諸国としては、多極化する世界の中でアフリカに関与して自らの地位を高めようと競争するUAEやサウジアラビアとの連携を模索することが望ましいのではなかろうか。
湾岸諸国は、建前上、米国か中国・ロシアかのいずれの側にも与さない立場であろうが、少なくともロシアや中国との協調に向かわないようには留意すべきであろう。そのためには、米国を中心に西側諸国と湾岸諸国の対話と協力関係の強化が必要であり、またアフリカのそれぞれに事情の異なる国ごとにきめの細かい分析と対応が必要である。