2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月18日

 中国には10%を超える関税を掛ける。中国は、巨額の補助金、低い借入コスト、強制的な技術移転、原材料の独占、閉鎖的市場を組み合わせて、西側企業よりも遥かに安価に電気自動車(EV)を製造する産業を生み出した。

 中国はEVを欧州に大量輸出し、欧州の生産者に深刻な被害を与えている。2018年にトランプが課した25%の関税がなければ、米国でも同様のことが起きただろう。得た資金を軍事力強化に使い、米国を脅かすだろう。

 世界規模の10%関税提案の批判者は、インフレを引き起こすと主張する。これには多くの疑問がある。

 トランプ関税の際インフレは2%以下だった。保護とインフレとの間には相関関係がないようだ。最後に、エネルギー、燃料、食品等はトランプ提案では関税の対象にしないだろう。

 経済的、地政学的な事実は、計画された関税の引き上げを強く支持している。しかし、それらには道義的な根拠もある。米国人は生産的な仕事、強い家族、繁栄し安全な地域社会を持つに値する。

 過去30年間の自由貿易政策はこれらを生み出さなかった。適切に使用されれば、関税は解決策の一部となる。

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世界のエコノミストの反応は?

 何たる議論だろうか。世界のエコノミスト達のほとんどは呆れているのではないだろうか。余りに目先の、過度に政治化された、時代錯誤の議論で信頼できない。

 特に先進国にとって、保護主義措置が有益になるのは緊急避難の一時的措置である。また国際ルールの枠内で取られるべきものである。

 「箱の外」で一方的な政策を取れば、それは当該国の中長期の利益にならないばかりか、ブーメランの如く当該国を含む世界全体にとり不利益になるだろう。不均衡や摩擦は、政策調整や交渉、協力を通じて解決し、必要があれば国際ルールを改善すべきであろう。グローバル・ガバナンスの強化こそ、取るべき道だ。

 一方的な関税が有用な手段だとは思わないし、それは全ての国の長期的利益や国際ルールに反する。どうしても価格でやるのであれば為替調整がもっとスマートではないか。


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