2024年3月20日付の英フィナンシャル・タイムズ紙社説が、米国政府のTikTokへの対応と日本製鉄によるUSスチール買収への対応の間には矛盾があると批判している。
米国の非グローバリゼーションの傾向は一段と加速している。米下院は、中国の所有者が動画アプリを売却しない限り、TikTokを米国で事実上禁止する法案を可決した。
その僅か24時間後、バイデンは日本製鉄によるUSスチール買収提案(149億ドル)に反対を表明した。これら二つの事案は、国家安全保障上の問題とされているが、その一つは寧ろ粗野な選挙政治のように見える。
中国所有のTikTokが、米国の安全保障に脅威を与える可能性はある。米当局は、中国がこのアプリを悪用して1700万人の米国の使用者を監視し、またはプロパガンダや誤った情報を拡散することを長い間懸念してきた。
対照的に、日本企業によるUSスチール買収は、どう考えても国家安全保障上の脅威にはならない。日本は長年の同盟国であり、中国の影響力抑制という利益を共有している。USスチールは、軍への直接供給企業でもない。
バイデンは、この買収に懸念を表明した際、国家安全保障には言及することなく、「米国の鉄鋼労働者によって支えられる強力な米国の鉄鋼企業を維持する必要がある」と述べた。しかし、バイデンは米国の産業基盤保護のために安全保障概念を拡大しようとしている。日本製鉄による買収は、米国経済にとり脅威となるものではなく、むしろその強化に成るものだ。
日本製鉄は、USスチールに投資し、その技術の強化を図ると述べている。日本は生産や米国の雇用を海外に移さないこと、または米鉄鋼労組との協定を守ると約束している。しかし、米鉄鋼労組は米国の鉄鋼企業クリーブランド・クリフスがより労組寄りだと見做し、早い段階で一層低額な同社の入札を支持していた。
USスチールの本社は、11月の大統領選挙で重要なペンシルベニア州にある。トランプは、日本の取引を阻止すると述べ、それはバイデンにジレンマとなった。