2024年6月18日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月18日

 この記事には、「保護主義を増大すべき経済上、地政学的戦略上、道徳上の理由がある」との副題が付いている。戦後世界が経験、取得した歴史と叡智に逆行する。経済上の議論は断片的、一方的で、政治レトリックに近い。

 地政学上の議論も、「勝つ」ことが目的で、問題「解決」の姿勢は全く見られない。問題は、勝つだけでは解決しない。

 道徳上の理由はもっと貧弱で、最後に2、3行言及するだけだ。「選挙に勝つための政策論」ではなく、真に「米国の国益や国民のための政策論」が必要ではないか。

4つの誤謬や誇張

 トランプの10%普遍関税論は危険だ。世界貿易機関(WTO)へのダメージも大きい。

 ライトハイザーの議論には、多くの誤謬や誇張がある。主要な点は次の通りである。

 ⑴ 中国を念頭に、黒字国は世界の需要を下げ、米国の産業を代替するだけで、グローバルな生産を拡大することにはならない旨述べる。ここ20年、中国の成長がけん引力になり世界の経済は拡大したのではないか。

 ⑵ 米製造業の崩壊は「比較優位」に基づくものではないと言い、韓国、台湾、中国を名指しし、これらの国が補助金等を組み合わせて、世界市場で優位を得ようとすると批判する。ライトハイザーの議論には、技術や労働力の質、生産性向上、もっと重要な産業構造転換や競争力の視点が全く欠落している。静態的な議論で、動態的な議論がない。最重要課題は、自らの競争力の強化だ。

 ⑶ 自由貿易が格差を生み出し、米国の地域社会の崩壊を齎した原因の一つだと言う。短絡的に過ぎないか。

 ⑷ トランプによる301条関税は国内の関連セクターの生産や投資を増大させたと誇らしげに言う。それは当たり前だろう。問題は産業の競争力が強化されたかどうか。関税のコストは、購買者や消費者が払ったであろう。鉄鋼・アルミ等特定セクターの関税引き上げが国内生産を高めたとの信念から、それを全部門に拡大しようというのが、今のトランプのユニバーサル関税論の発想だろう。もう一つ重要な問題は、トランプの関税引上げ論には、引き上げ終了時期の議論がないことだ。

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