トランプ政権米通商代表部(USTR)代表のロバート・ライトハイザーが、「保護主義を増大すべき」経済上、地政学上、道徳上の理由があると、2024年3月8日付の英エコノミスト誌に寄稿している。
今トランプは、広範な商品に対し「控えめな関税」を掛けることを提案し、中国製品に対しては、より大きな関税を提案している。トランプの目的は、米国の貿易赤字削減と米製造業の再活性化だ。対中関税は、地政学的競争に勝つためだ。
巨額の貿易赤字は米国の経済成長の足を引っ張る。持続的な貿易黒字国は、世界の需要を人為的に低下させる。
これらの国々は巨大な市場の歪みを利用して外国の生産能力を自国の生産に代え、その収益で赤字国の資産を買い込む。グローバルな生産を拡大することにはならない。
米国の高度技術製品輸入は年間2180億ドル超になっている。パソコンを発明したにもかかわらず、今や米国ではほとんど製造されず、製造には輸入部品が必要となる。1970~80年代、米国は半導体で世界をリードしたが、今や世界の供給の12%しか作らず、先進的なチップは完全に輸入に依存し、電池や原発、ドローン等でも中国に遅れている。
これらの変化は、「比較優位」から生じたものではない。それらは、他の国々の産業政策の結果だ。
韓国の鉄鋼産業は、安価な鉱石があるからではない。台湾が半導体製造センターなのは、安価なシリコンがあるからではない。中国の製造業は、政府による補助金、国内市場の制限、手緩い労働法等の助けを得て世界市場での優位を目指している。
自由貿易政策の失敗が、米国の中産階級を打撃した。高収入雇用が失われ、米労働者の収入は数十年停滞した。格差は増大し、地域社会は崩壊した。自殺、アルコール中毒等「絶望死」が急増した。これらの原因の一つが貿易にある。
トランプは、全ての輸入品に10%の関税を提案した。経験から、高収入産業の雇用が創出されると考えられる。トランプ政権時には関税を引き上げ、平均家族収入も上昇した。