2024年5月1日(水)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2024年4月17日

校長が動けば学校は動く

 学校はいじめ問題に対して対応が遅いといわれるが、それは正しくない。学校の内部で、しかも、一部の教員だけが抱え込んでいるからそうなるにすぎない。

 学校という組織は、外部の眼があることを意識すれば、急に変わる。診断書を一枚出しただけで、突然、組織的対応を開始し、しかも、その後は驚くべき迅速さで対処してくれる。

 学校を動かすには、診断書の書き方に工夫が必要である。学校・学校設置者の責任に言及することである。そうすれば、その診断書は、直ちに学校のトップに上がる。

 診断書を読めば、校長・理事長・教育委員会は、自身の責任が問われていることがわかって、目の色を変え、すぐさま、トップダウンで対応を指示してくれる。学校という組織は事なかれ主義だと思われがちだが、けっしてそうではない。トップに対し、その責任に注意喚起すれば、校長は必ずやリーダーシップを発揮してくれる。

 診断書の効力は絶大である。そこに「いじめ防止対策推進法」への言及があり、しかも、その第二十八条で学校・学校設置者の責任が明記されており、その点に注意喚起した文言があれば、この診断書を握りつぶすことはあり得ない。実際、握りつぶしても無駄である。診断書には、記載日、医師名、医療機関名が記されるうえ、コピーが医療機関側に保存される。訴訟が生じた際、診断書の証拠価値は極めて大きい。

 筆者としては、訴訟に発展することがあることを見越して、患者・家族に対して「この診断書に関して、求められたらいつでも法廷で証言します」と約束している。

校長は法律を読んでいない

 「いじめ防止対策推進法」の策定に関与した小西洋之代議士は、ABEMA Primeに出演した際、率直にも「教育委員会や学校の先生は、法律も基本方針も読んでいない」と述べている(2021/05/08、「【教育】いじめ防止法はなぜ機能不全に?隠ぺい&責任逃れの学校や教育委員会の課題は?子どもたちを守るために今必要なことを考える」)。この点は、筆者も、自身の臨床実感に照らしてそう思う。

 教師も校長も教育委員会も、「いじめ防止対策推進法」のことを知識としては知っている。しかし、児童・生徒とその親が、いじめ被害を訴えても、「大げさに訴えている」という程度にとって、受け流す。

 受け流してしまう理由は、ほかならぬ自身が法を読んだことがないからである。同法第二条には「いじめ」の定義に関して、「当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」という文言がある。それを知っておれば、「まあ、君、相手にしないで、放っておきなさい」というような気休めを言うはずがない。

 それでも、学校の外から診断書一枚が出てくるだけで、校長が動き、理事会が動き、教育委員会が動き、大山が突然動く。おそらくは、診断書を読んで、大あわてで「いじめ防止対策推進法」を見て、「重大事態」の定義を読み、そこに自身の責任が明記されていることを知って、直ちに受話器を取って教育委員会に電話をかけているのであろう。


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