2024年6月16日(日)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2024年4月17日

「肉声」で米国へ説明できなかった責任

 1つ目は、何と言っても英語でのコミュニケーションだ。そもそもは、野球に専念するあまりに、英語による意思疎通を通訳に全面的に頼ったことが問題の発端となった。この事実は重い。

 過去、多くの日本人選手がMLBに移籍したが、多くの場合に球団が通訳を用意して、その通訳が常にコミュニケーションの軸となってきた。例えば、日本人メジャーリーガーが、インタビューなどを通訳抜きで英語で受け応えするというシーンは極めて限られている。

 考えてみれば、野球選手というのは20代から30代の頭の柔らかい年齢で渡米することになる。例えば、キューバからの亡命選手、メキシコやパナマからの移籍組などの場合、米国に来て数年で通訳は外され、英語でチームメイトと語り、インタビューに応じて野球界の一員になっていく。日本でもモンゴルやブルガリア出身の力士は、24時間日本語漬けとなる中で、短期間に驚くほど流暢な日本語を習得する。

 そう考えてみると、日本人のメジャー選手だけがいつまでも通訳に頼るというのは異例だ。日本の側、特に広告業界などには「流暢な英語を話す姿が流れると、日本人からは心理的な距離が出てしまう」という懸念があるのかもしれないが、この点に関してはカージナルスのヌートバー選手の例などを考えれば、余計な心配と思える。

 とにかく、今回の事件にしても、大谷有罪論などという悪質な陰謀論が飛び交った背景には、大谷翔平というスーパースターの「肉声」が米国のファンに届いていなかったという問題があるのは明らかだ。特に大谷選手の場合は、エンゼルスで6年プレーし、そしてドジャースでは10年の大型契約を結んでいるということもあり、これはもう完全にメジャーの顔であり、アメリカという社会の要人である。

 動かすカネのスケールも含めて、大谷選手には存在感に伴う責任があり、その第一は英語の肉声を発信して行くことだ。この点に関しては、既に大谷選手本人、代理人、球団として動き始めているようだ。

 現地14日に全国放送のESPNが行ったドジャース対パドレスの試合前には、大谷選手の英語でのインタビューが放映された。具体的には、各選手が自慢のクリーツ(スパイクシューズ)を紹介するもので、大谷選手は「ドジャーブルーにロゴ入りです」と流暢な英語で語っている。


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