米国社会が称賛を寄せる2つの行動
2つ目は、カネの問題である。日本的な発想法では、カネに興味がなく、野球に専念している姿は理想の聖人というイメージになる。だが、米国では違う。巨額の収入があり、財産を有している人間は、その金額に見合う責任を果たすべきだという考え方が根強い。
まず大谷選手は家族と協議の上、専門的な資産の管理人を選任すべきだ。スポーツマネジメントの企業は、狭義のエージェント業務だけでなく、この分野においても一流の体制を組むようアドバイスをすべきである。その上で、2つの行動を提案したい。
まずチャリティー活動である。大谷選手は日本全国の小学校にグローブを配るとか、日本の自然災害に対して寄付をしており、こうした行動は称賛されて良い。だが、大谷選手の巨額な資産の出所の多くは米国社会であり、米国においても社会に還元するという意味で、チャリティーの活動を積極化すべきだ。その際には、カネを出すだけでなく、実際に本人や家族がチャリティー活動に時間を割いて、顔の見える活動を通して人々を勇気づけるような努力が求められる。
米国の球界にはこうしたチャリティー活動を行った選手に対する賞として、ロベルト・クレメンテ賞というのがある。これは本気で取り組まなくては取れないし、また受賞した場合の名誉は大きい。資力という点では十分にあるのだから、大谷選手とその一家はこの賞を獲得するつもりで頑張っていただきたい。
もう一つは、これは引退後になるだろうが、プロスポーツのオーナーシップに参加して、業界を盛り上げるということが考えられる。ドジャースはまさにそのような超一流のプレーヤーだった紳士淑女が資金を出し合って経営体を形成している。
大谷選手本人も、マジック・ジョンソン氏や、ビリー・ジーン・キング氏などと既に交流があると思うが、彼らの後を継いでいくような、お金の使い方を考えていただきたい。チャリティーにしても、スポーツ団体の経営にしても、生きたお金の使い方をすれば、米国社会は素直に称賛を寄せてくれるのは間違いない。