アメリカ野球界は、大谷翔平選手の専属であった水原一平元通訳のスキャンダルで大騒ぎとなっている。既にメジャーリーグ(MLB)事務局も調査を開始したし、連邦捜査局(FBI)も捜査中という中で、シーズンが本格開幕するのと並行で日替わりで事態が動いてゆくことが考えられる。
現時点では、水原元通訳がギャンブルの損失で作った450万ドル(6億8000万円相当)の負債について、これを返済するために大谷翔平選手の銀行口座から行われた送金が問題になっている。送金手続きを行ったのが、水原元通訳なのか、それとも口座の名義人である大谷選手本人なのかという事実の認定の問題がまずある。
この問題は、事実の認定によって水原元通訳の刑事責任の種類が変わってくるということがまずあり、また大谷選手においても、仮に違法な賭博に関係した資金提供ということになれば、無傷では済まない。ただ、この送金の経緯問題については、調査が進めば事実関係は明らかとなろう。
問題は、どうしてMLBがこの事件を重大視しているかということで、そこには最悪の事態を想定しての危機感があると考えられる。
球団職員がスポーツ賭博に関与する深刻さ
その危機感は、まず前提として、今回の事件が「違法賭博」だという問題がある。この「違法性」であるが、2種類に分けて考えるべきだ。まず、2018年以降、米国で解禁されて巨大産業になっているオンラインによるスポーツ賭博が、「カリフォルニア州では解禁されていない」から、水原元通訳の行為が違法だという問題がある。
けれども、こうした「カリフォルニアだから違法」という指摘は、実は本質的な問題ではない。そうではなくて、水原元通訳は球団職員として全試合、全イニングにベンチ入りする球団の現場の人間だった。野球賭博については、このような野球の現場の人間が関与することは、野球協約や個別の契約で厳格に禁止されている。国や州の法律ではないが、この協約違反の疑いのほうが深刻である。