2024年11月21日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年4月30日

 したがって厳格な措置をまず国内で設定した上で、「われわれは自国のEEZで厳しいサンマ資源管理を実施している。ついては条約で定められている通り、公海でも一貫性のある措置を実施すべきだ」と主張すべきであったのだ。もちろん、時を過去に戻すことにはできないので、今になって「たられば」の話をしても、サンマに関してはどうすることもできないのだが。

サンマの陰に隠れた議題:サバの資源管理

 この会議についてサンマの漁獲枠が報道される陰で、マスコミではほとんど触れられていないが重要なことが一つ決定されている。サバの漁獲枠の設定である。

 拙稿「「サバが獲れない」漁業者が嘆息する背景「適正水準」から「乱獲」へ、年によって一転する資源評価 信頼されていないその実態とは」でも触れたことがあるが、現在多くの太平洋のサバ漁業者が不漁に喘いでいる。23年のマサバ・ゴマサバ水揚量は21万トンと、19年の41万トンからほぼ半減している。

 昨年まで12年連続水揚げ日本一だった銚子漁港は、その座を釧路に明け渡した。イワシとともに水揚げの主力であるサバの水揚げが半減したことがその要因だ。

 青森県八戸市に本拠を有する水産加工業者も、今年早々青森地裁に自己破産を申請している。サバの水揚げ不振が理由の一つだという。

 サバの日本国内での漁獲枠も、話はサンマと同様である。ほとんどの場合、これまで実際の漁獲量を遥かに上回る漁獲枠が設定され続けてきた。

 さらに問題なのは、漁獲枠の「期中改定」というシステムである。この資源は、現在太平洋側にいる系群と日本海・東シナ海側にある系群とで別の漁獲枠が設定されているが、日本海・東シナ海側については22年漁期には12万9000トンの漁獲枠が設定されていたところ、漁が好調でこれを上回りそうになった。このため、漁期の後半に14万3030トンに漁獲枠が「期中改定」、つまり底上げされたのである。

 最終的な漁獲量は14万1931トンと当初枠を超えたものの、「期中改定」により改定後の枠内に収まることになった。これでは、枠としての意味は希薄である。

 話をNPFCの対象としている太平洋全体に転じてみると、この海域でサバを漁獲しているのは、日本、ロシア、および中国である(図4)。NPFCの統計によると、日本とロシアは自国の排他的経済水域での漁獲がそのほとんどである一方、15年から参入した中国は公海域での漁獲がほぼすべてである。さらに問題なのは、今後欧州連合(EU)がこの海域に大量のサバを一網打尽にできる大型底引き網漁船で新規参入を狙っていることである。

 NPFCでは今回、条約が適用される公海水域のマサバの漁獲量を10万トンに制限する措置が合意された。底引き網漁船についてはさらに、中国の許可隻数は3隻以内、EUの許可隻数は1隻以内にすることも併せて決定した

 中国やEUの漁獲に対して一定の枠を嵌めたと言える。これまで、この資源については漁獲枠自体設定されていなかったことから、一歩前進である。

 今回NPFCで採択された決定では、公海で操業する中国やEUに枠をはめる一方、排他的経済水域で操業する日本とロシアに対しても、自国管轄水域内で公海で実施している規制と一貫性を有する措置を取ることを求めている。これを受け日本は、23年度漁期に51万トンだった太平洋でのサバの漁獲枠を35万3000トンに削減することを予定している。


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