2024年11月23日(土)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年4月30日

条約の適用される海域

 10年代半ばより急減する漁獲量を背景に、日本は漁獲枠の設定を主張してきたが、NPFCが条約上管轄する法的権限を有しているのは公海域のみである。他方、サンマは公海だけでなくEEZにも回遊する。そこでNPFCは法的な管轄権はないものの、EEZも含めた形で漁獲上限を設定し、EEZで漁獲をしている日本などの国々はEEZでもNPFCで合意した漁獲上限に則り漁獲を行うようにしている。

 このように、NPFCでは、条約が適用される北太平洋公海域と、条約が適用されるわけではないが、NPFCで決まった措置に即して規制を行うEEZとを分けて考える必要があり、その配分が問題になってくる。漁獲枠の配分を考える場合、過去の漁獲実績が一つの物差しとなっており、直近の実績だけを考えると、公海での漁獲実績のほうがEEZより遥かに多い。

 しかしこれではかつて専らEEZで漁獲してきた日本には不利であるため、日本が主導して採択されたサンマの保全管理措置では配分比率が公海が6割でEEZが4割と、直近の比率から鑑みるとEEZに手厚いかたちで設定されている。この割合なら、北太平洋全体での漁獲上限が大幅に削減されたとしても、日本は漁獲量の削減という「痛み」を伴うことはない。

 他方、漁獲量の削減という「痛み」を好まないのは公海で操業を行っている中国や台湾とて同様である。結果、漁獲上限が設定されたのだが、誰にも「痛み」が伴わないが、その代わり資源回復に資するとは言えない措置が取られることになってきた。

 今回採択された来漁期の漁獲上限も、直近の漁獲実績とはかけ離れており、資源回復に直ちに効果的とは言えそうもない。現行措置の規制内容が継続し、かつ今後も資源状態が悪い場合は毎年1割を限度に漁獲上限は削減されるが、今後も漁獲量が現状のままだと、漁獲上限が漁獲実績とほぼ同様になるのは30年になってからである。

やるべきだった日本の戦略

 そもそもの問題は、漁獲量の減少が誰の目にも明らかとなる手前で、十分な規制を実施しなかったことにある。下図3は日本のサンマの漁獲量と漁獲枠(TAC)だが、一見して分かる通り、日本は到底取り切れない、ということはつまり資源保護策としては重要な意味があると言い難い漁獲枠を設定してきていた。2000年代には北太平洋のサンマの約6割から8割は排他的経済水域内で漁獲されていたのだから、この段階で有効な漁獲枠を国内的に設定しておくべきだったのだ。

 日本も批准しており、さまざまな国際漁業条約の枠組条約的な位置づけを持つ「国連公海漁業協定」では、公海を回遊する資源等に関して沿岸国と公海で漁獲を行う国は、これら資源について一貫性のある措置を達成するために協力する義務があると定めており(第七条)、NPFCを設立した北太平洋漁業資源保存条約でも、この規定に基づき、公海での措置とEEZでの措置が一貫性を有するものであるよう確保することを求めている(第三条(i))


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