デトロイト市の破綻は複数の要因が絡み合った結果である。「自動車産業の凋落」も要因の1つであるが、これを最大要因とする声は少ない。
ミシガン大学のマーティン・ジマーマン教授は「デトロイト市は人口が減り続ける中、インフラを往年の規模のまま提供し続けた。そして公務員OBの年金や医療保険もそのままにしておいた。つまり、市は縮小する状況に対して、有効な手を打たなかった。これが大きな要因」と説明する。
市の負債180億ドルの約半分は年金、医療保険の支払いといったいわゆる「レガシーコスト」である。現在、退職して年金をもらっている市の元職員の数が現職の約2倍、2万人もいる。デトロイト市の破綻手続きに関する今後の裁判では、いかにレガシーコストを引き下げるかが焦点となっているが、公務員OBは引き下げに反対し、市内でデモを行っている。強力な労働組合と州憲法の規定もあり、改革は一筋縄でいくものではない。市債の償還と利払いも大きな負担としてのしかかっている。市債の負担軽減は破産手続きを経る必要があり、投資家との交渉という難題も待ち受ける。
前出のジマーマン教授は「自動車産業だけに頼るのではなく、ハイテク産業を誘致するなどして、税収を増加させるとともに、治安や教育レベルを向上させ、働きたくなる、住みたくなるような町づくりを推進すべきであった」と続ける。「デトロイト市の破綻原因は行政の怠慢」と言い切る人も多くいた。
本記事は、WEDGE12月号特集「現地ルポ デトロイトから見える日本の未来」の第1部の一部分を抜粋しました。本誌では第1部の残りや下記の記事も読むことができます。
◎企業城主に頼らない町づくり
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