市の財政コンサルタントを務めるパトリック・オキーフさんは「衰退は緩やかに起こった。第2次世界大戦後に郊外の住宅ローンプログラムができ、郊外が発展していった。大きい上に徐々に進行していったので、タイタニック号のように沈んでいることに気がつかなかった」と説明する。
デトロイト市内の路地。こうした光景は市内の至るところで見ることができる。
「市内は凶悪犯罪が多くとても危険。移動はタクシーを使うなど、極力歩かないほうがいいよ」。住民はそう教えてくれた。ダウンタウンの中心部には、GM本社やマリオットホテルなどが入居するルネッサンスセンターがあるが、その周辺わずか数百メートル四方のエリアを除けば、市内は廃墟となった家屋やビルが目立つ。公園にはホームレスがたむろしており、とても子どもが遊ぶ環境には見えない。
デトロイト到着日の夕刻、レストランを探しに市内を歩き回ったが、営業している店舗が見付からず、夕飯にありつくのに苦労した。治安が極端に悪いことから、夜は早々に営業を終える店舗が多いという。廃屋はギャングのたまり場や麻薬取引の場になっており、かつて全米を代表する都市であった「自動車の都」の姿はなかった。
デトロイト市にまつわる統計データは悲惨だ。
〇人口68万人(最盛期は185万人で60%超の減少)
◯失業率18.3%(全米平均8.0%)
◯暴力犯罪率は全米一で国内平均の5倍(20万人以上の主要都市)
◯年間13万件超の犯罪が発生し、検挙率はわずか8.7%
◯1年間で殺人344件、強姦426件、放火958件、強盗・窃盗・盗難4万8735件
◯街灯の40%が故障
◯警察官は通報してから到着するまで平均58分(全米平均11分)
ふつう住みたいとは思わないだろう。