2024年7月16日(火)

プーチンのロシア

2024年5月28日

 要するにロシアの民主化は欧州諸国の総意だということだ。既に数多くの米欧の有力な論者、専門家が権威ある論壇でポスト・プーチンのロシア民主化論を論じている。

 筆者の調査ではここ1~2年だけでも30件近くある。もちろん、ロシアは多民族国家だし、ロシア全域が一つの民主的イデオロギーでまとまるかどうかという問題はある。単純化は禁物だが、ポスト・プーチンのロシアが向かうべき大きな方向性については欧米の政策論壇で強い合意があると見てよい。

新しいユーラシアは経済面でも存在感を持つ

 ポスト・プーチンのロシアに対して欧米や日本が適切に対応したらロシアは変身を遂げる可能性がある。経済的にも大きなダイナミズムが生まれる。

 民主ユーラシアが安定した地域になれば、世界から投資が集まり、拡大ユーラシア、すなわち欧州連合(EU)経済圏とロシアが合体して世界的な経済圏を出現させるかもしれない。ユーラシアは発展する自由経済の大陸に変身する。 

 重要な視点はエネルギーである。ユーラシアはその豊富な資源と広大な領域を有する一大自由経済圏に変身する。

 化石燃料の世界的な生産国でありながら、大規模な風力や太陽光発電の基地に変身する可能性がある。世界のエネルギー経済の動向を左右する存在になり得る。

 欧州とロシア全体の脱炭素化を起爆する潜在能力もある(「可能性を秘めるロシアの再生可能エネルギー」グローバルマーケティングラボ)。そして脱炭素持続成長という名の新文明の世界的リーダーにもなれる。

日本にとっても好機へ

 それにロシアの人的資源や地下資源、広大な領土に由来する自然エネルギー資源(太陽光発電や風力発電など)などを考慮すると、欧露共同体は欧州とユーラシアの安定と繁栄を保証する新しいダイナミズムを生む可能性がある。事と次第では、欧州と自由ロシアは19世紀以来米国が担ってきた世界の政治と経済のけん引力のような存在になるかもしれない。そしていずれは政治外交的脈絡では新たなリベラル勢力として登場することになる。 

 日本は新しい可能性を手にすることができそうだ。日米同盟関係は将来とも重要だが、同時にユーラシア全体でリベラル勢力が優勢になることは文句なしに日本の国益だ。欧州と協力して開放的なユーラシアを実現するよう日本なりの貢献は出来るはずである。

 日本はこれまで太平洋とその対岸にある米国と対話し、協力してきた。今後はそれに加えてユーラシア大陸を経て欧州諸国とロシアとも対話し、協力していく時代に入る。経済的にも新しい機会を手にすることになる。

 民主ロシアを支援し、日欧露の連携を進める。日本外交は新しい豊かな可能性のすそ野を広げることになる。 


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