2024年11月22日(金)

プーチンのロシア

2024年5月28日

トランプ思想が欧露の接近を生む

 欧州側にはロシアを友好国として抱き込む強い必然性がある。それはトランプ前大統領に欧州が北大西洋条約機構(NATO)の関係で「こっぴどく」痛めつけられたあの経験(『「第二次トランプ大統領」に備え日本や世界ができること プーチン政権継続で波乱と混乱の時代か、それとも新しい<欧露民主同盟>か?』)に由来する。 

 「もしトラ」が現実化している以上、欧州は安全保障面で米国依存を減らす必然性がある。一つの方法はロシアを欧州の友好国にしてしまうことだ。そうなるとNATOの存在理由が無くなる。そして米国依存は減る。  

 欧州側はポスト・プーチンのロシア国民に働きかけ、対話し、あらゆる支援を提供し、共に繁栄する自由ユーラシアの建設を誓約できる。ロシアの文化や伝統を尊重し、希望と友情とロシアが経験したことがない成長と繁栄を保証する。

 そういうメッセージを届けることができる(’What Could Come Next? Assessing the Putin Regime's Stability and Western Policy Options’)。その方が欧州にとって経済的実利もあり、賢明で、優先度の高い選択肢だ。 

 米国主導のNATOのような軍事同盟に今後長期間依存していくより、ロシアを西欧同盟の内懐に引き込んだ方が外交的に余程賢明だ。いずれ必ず到来するポスト・プーチンの時代になれば、西欧社会は必ずそうするだろう。中国の政策当局者が危機感を持つ所以だ。

「欧州は対ロシア宥和政策で失敗した」

 時あたかも、欧州論壇では、欧州の従来型の対露政策は間違いだったという有力な議論(“Les Aveuglés ;Comment Berlin et Paris ont laissé la voie libre à la Russie”Sylvie Kauffmann著、筆者訳「目先が見えない人々:如何にして独仏はロシアの勝手気ままを許したのか……」)が出てきた。著者シルビー・コフマン女史はルモンド紙の著名な外交記者である。

 この本は独仏両国の首脳がプーチン大統領には長く宥和政策をとってきた結果、同大統領の専制的ロシア支配を助長してきたと論じている。これは非常に重要な問題提起であり、欧州では大きな議論を引き起こしている。 

 当然新しい対露政策はどうあるべきかが模索されていくだろう。私見では新しい対露政策は必然的にロシアを西欧民主陣営に引き込むことを目指すはずだ。

「ロシアを引き込む」という欧州の同意

 欧州民主勢力がポスト・プーチンのロシアを西欧民主主義世界の一員として取り込もうとするなら、成功する可能性はもちろんある。まず、ロシア国民の中にもそれを望んでいる人がいるからだ。

 ロシア人経済学者でパリ高等政治学院のセルゲイ・グリエフ教授は、ハーバード大学での講演でそれは可能だと論じている(『「第二次トランプ大統領」に備え日本や世界ができること プーチン政権継続で波乱と混乱の時代か、それとも新しい<欧露民主同盟>か?』)。欧州議会もロシアの民主化はできると決議した。2021年9月欧州議会の外交委員会はロシアの国内の圧政と対外的侵略は断固阻止するが、ロシアは民主化できると宣言したのだ(’MEPs call for new EU strategy to promote democracy in Russia’)。 


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