6.対中国強硬姿勢
「第二次トランプ政権」は対ロシアとは対照的に、中国に対しては、バイデン政権以上に強硬姿勢を貫く構えだ。特に経済・貿易面では、国家安全保障に関わる中国高度先端分野への米側技術流出・投資や中国側からの対米企業投資に対する厳しい制裁措置を打ち出す。
この点に関連して、ヘリテージ・プロジェクトは具体的に「TikTokの即時禁止、および米国各地に広がる『孔子学院』の即時閉鎖」などの方針を固めている。ただ、中国が台湾に武力侵攻した際の米側の対応については、ただちに軍事介入に踏み切るかどうか、今のところ、明確な方針は決まっていない。
その背景として、かつてトランプ大統領が台湾有事に関連し対中強硬軍事戦略を検討した際、財界首脳たちがあいついでホワイトハウスに電話を入れ、「金融市場がパニック状態になる」として即時軍事介入表明に猛反対したため、大統領がとりやめたいきさつがある。
状況次第では、今後の米中貿易交渉で中国側から有利な譲歩を引き出すため、台湾政策で妥協の道を残す案も検討されている。
7.同盟関係の見直し
「第二次トランプ政権」は通商面で、レーガン時代の自由貿易主義と距離を置くのと同様に、外交面でも、同盟関係重視より「アメリカ・ファースト」がより強調されたものとなる。 その結果、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退、もしくは一部の欧州同盟諸国からの米軍撤退措置も可能性としては否定できない。
こうしたことから、すでにフランス政府当局者は、トランプ氏の政権復帰をにらみ、他の同盟諸国に対し、今のうちから独自の兵器開発加速、防衛力強化措置を検討するよう呼びかけ始めていると伝えられる(米ワシントン・ポスト紙)。
また、安全保障面のみならず、通商面でも、国内産業保護の観点から、欧州、日本、韓国などの同盟諸国を含むあらゆる国からの輸入品に自動的に10%の関税を課す選択肢も検討対象となっている。
このため米欧マスコミ界では、自由主義世界における同盟関係の結束が揺らぐ可能性も指摘されている。
すべては選挙の結果次第
上記のように、「第二次トランプ政権」下では、第一次政権で不完全燃焼に終わった「米国第一主義」をなりふり構わず推進していく構えだ。ただ、トランプ側近グループがこのような大胆なスローガンを掲げたとしても、具体的な政策として実施できるかどうかについては、いくつかの不確定要因が残されている。
たとえば、内政面では、数万人規模の有能な人材が「民主党支持者」を理由とした〝赤狩り〟の対象者として追放された場合、巨大な連邦政府システムが機能不全に陥り、多くの国民の不安と不信を招く恐れがある。
また、24年議会選挙で、民主党が上下両院、あるいはそのどちらかを制した場合、法案を成立させるために、民主党側との妥協をしばしば余儀なくされることになる。
そして何よりも最大のネックは、四つの罪状で起訴され、来年選挙の年にあいついで公判出廷を余儀なくされるトランプ氏が、果たしてバイデン民主党現職大統領相手の本選レースを制することができるかどうかだろう。