2024年6月29日(土)

Wedge REPORT

2024年6月17日

石原都政の禅譲受け
史上最多得票も、任期は最短

猪瀬直樹(Naoki Inose)
作家。
 第18代(2012年12月~13年12月)
信州大学人文学部卒業後、出版社勤務などを経て明治大学大学院政治経済学科へ。『天皇の影法師』(中公文庫)で作家デビューし、『ミカドの肖像』(小学館文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した。政府税制調査会、行政改革断行評議会、地方分権改革推進委員会委員も歴任。(ATSUSHI TOMURA/ GETTYIMAGES)

 石原慎太郎都政で副知事を務める中、石原氏が4期目の途中で国政へ出馬するために突如辞職を表明する際、辞任会見の場で「後継指名」された。石原氏のネームバリューと新党結成による国政進出という注目を追い風に、知事選過去最多となる約434万票を得た。

 東京メトロと都営地下鉄の一元化を掲げ、2回目の東京オリンピック・パラリンピック誘致に貢献したものの、知事選直前に医療法人「徳洲会」グループから現金5000万円を受け取っていたことが発覚。受領の経緯などに関し、発言が二転三転したことから、都政混乱の責任を取る形で辞職した。

 この後の舛添要一氏も政治資金の私的流用などの公私混同による辞職を余儀なくされ、3代続いて任期途中に知事が職を離れた。これにより、当時の安藤立美副知事は3回も知事の「職務代理」を務めたことになる。頻繁な都政リーダーの交代は都政の停滞になることに加え、「政治が変わりすぎて都庁職員が機動的に動かない官僚気質になりつつある」と都政事情に詳しいある有識者は指摘する。

 都庁に36年在職し、石原都政時代に副知事も務めた明治大学の青山佾名誉教授は「3期以上務めた歴代の知事は東京の問題への政策の特徴を掲げていた」と指摘する。都知事は議会をはじめ数多くの調整もある。イメージや人気におもねらない、あるべき東京を見据えた選択が必要のようだ。

 政権との〝対峙〟演出 新風を巻き起こす

小池百合子(Yuriko Koike)
政治家。
第20、21代(16年8月~現在)
ニュースキャスターを経て、1992年の参院選で日本新党から出馬し初当選。翌年に衆議院へ転じ、新進党や自由党を経て、自民党に入党。第二次小泉改造内閣で環境大臣、第一次安倍内閣で防衛大臣を歴任。(YOSHIO TSUNODA/AFLO)

 自民党三役を務めていたにもかかわらず、自民党都連を「いつ、誰が、何を決めているか分からないブラックボックスだ」とし、出馬時に当時の都連幹事長を「東京都議会のドン」と批判した。反既成政党や既得権益の打破というまさにポピュリズムの手法で多くの支持を得た。

 その後の都議会議員選挙でも自らが率いる「都民ファーストの会」が大躍進し、新風を巻き起こした。ただ、公約で掲げた待機児童や満員電車をなくすといった「7つのゼロ」はほぼ達成されていない。

 それでも、20年7月の都知事選挙では、次点に大差をつけて再選を果たした。前出の千葉大学の水島教授は「公約を守らなかったことが致命傷にならず、国と一定の距離をとりながら新型コロナウイルス感染症対策はじめ政治運営するのが都民に支持されたと言える」と解説する。

 東京都は全国の都道府県で唯一、地方交付税不交付団体であり、中央政府からの恩恵やコントロールが弱い。「欧米のような右派や左派のポピュリズムではなく、『反既成政党』といったポピュリズムが日本および東京の特徴」と水島教授は話す。

 住民の入れ替わりが多い東京都は、必ずしも自民党が第一党ではなく、農村部のような強い地域団体によるつながりも薄い。浮動票を狙った国との対立やワンイシューの波に飲み込まれがちだ。知事選においては、ポピュリズム戦略は候補者の必須の条件ともなっており、そうした前提で選挙を見る必要がありそうだ。

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Wedge 2021年8月号より
あなたの知らない東京問題
あなたの知らない東京問題

東京と言えば、五輪やコロナばかりがクローズアップされるが、問題はそれだけではない。

一極集中が今後も加速する中、高齢化と建物の老朽化という危機に直面するだけでなく、

格差が広がる東京23区の持続可能性にも黄信号が灯り始めている。

「東京問題」は静かに、しかし、確実に深刻化している。打開策はあるのか─。


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