2024年10月5日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2024年7月7日

 夫のリカルドはやはりそれまで3期9年にわたりオルモック市長の職にあったが22年の総選挙ではルーシーの代わりに下院議員に立候補したという。つまり多選禁止規定を回避するために夫婦で下院議員と市長を入れ替わったのだ。

 副校長によるとフィリピンではこのような家族・親族の間での政治家の公職の入れ替わりは珍しくないとのこと。多選禁止規定を回避するために地元有力ファミリーが家族・親族の間で国会議員・知事・市長などを独占して“たらい回し”するのはフィリピン政治の一般慣行らしい。

オルモック市立美術館はゴメス夫妻の政治宣伝の殿堂?

オルモック市立美術館に展示されていたゴメス夫妻の肖像画。芸術的な価値があるのだろうか?

 オルモック港に面した新築の洒落た建物がオルモック市立美術館である。地元の芸術家の絵画や彫刻やモダンアートのオブジェが広く清潔な空間に展示されている。ところがやたらと美男美女のゴメス夫妻の写真と展示物が目立つ。

 13年の大型台風でレイテ島が大被害を受けた時に日本の支援団体を受入れた当時のルーシー・ゴメス下院議員。この台風ではルーシーが夫である当時のリカルド・ゴメス市長と協力して被害者支援に尽力したことがパネルで紹介されていた。

 夫妻の肖像画とか過剰な演出の展示物には公共施設の私物化ではないかと違和感を覚えた。日本でも地方の首長選挙では現職が圧倒的に強いがここまで露骨な政治宣伝は目にしたことがない。

代々継承される政治家ファミリー支配

 パナイ島のイロイロ市は人口45万人で古くからビサヤ諸島の交易の中心都市。港近くの中華街でオートバイのスペアパーツ問屋の主人と懇談。やはり現職市長、州知事、下院議員は地元の政治家ファミリーの出身のベテラン政治家とのこと。

 現職イロイロ市長(トレーニャス家)の経歴は1986年~92年まで市議会の評議員。92年から市長。さらに2001~10年に3期9年市長を務めた。その後地元選挙区の下院議員に立候補して10年~19年まで法定限度いっぱいの3期9年議員活動して19年に再び市長になり現在2期目である。

 他方で現職のイロイロ州知事(ディフェンソル家)は、2019年に就任して現在2期目。なお、州知事就任以前は2010~19年の3期9年地元選出下院議員であった。さらに現職州知事の前任州知事は彼の父親。父親は州知事を3期9年×2回=合計18年務めた。つまり1992~2001年、2010年~19年の2回である。そして01~10年は下院議員として3期9年務めた。つまり親子で州知事と地元選出下院議員をたらい回しにして来たのだ。

政治家ファミリー支配は選挙民にとってメリットがある?

 ドマゲッティのホステルのマネージャーは30代半ばの論客であった。彼によるとサガルバリア家が地域の政治を支配していることに選挙民は余り不満がないという。

 マネージャー氏曰く、国会議員・州知事・市長という要職をファミリーが占めているので政治家同士が足を引っ張ることがなく、政策に矛盾や無駄がない。またファミリーは地域の実情を熟知しており住民の要望に的確に対応できる。ファミリー政治により公共工事・福祉政策などが継承されて長期的に安定した行政が可能となる。さらに長年政治家ファミリーとして名声を築いており、名声を維持するために“ぽっと出の成り上がり政治家のように任期中にひと稼ぎしようと汚職に走る”ことはない。

 ほぼ同様のことをオルモック市のゴメス家について上述の副校長女史も語っていた。イロイロ市の問屋の主人もファミリー支配について違和感はない雰囲気だった。


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