2024年6月17日付のワシントン・ポスト紙が、中露の核軍拡への米国の対応について、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のプラネイ・バディ上級部長(軍備管理・軍縮・不拡散担当)の演説内容を紹介しつつ論評した社説を掲載している。
ロシアと中国は世界を核軍拡競争に押しやっている。これは、冷戦時の核軍拡競争よりも危険で、制御することがより難しい。それが、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のプラネイ・バディ上級部長(軍備管理・軍縮・不拡散担当)が6月7日の軍備管理協会で行った演説のメッセージであった。
近い将来に「戦略分野での軍備管理が成立する可能性は薄い」とバディ上級部長は指摘する。ロシアは対話を拒否し、米露の戦略核兵器の弾頭数の上限を定めた新STARTは2026年に期限を迎えるが、これに代わるものはできそうにないと同上級部長は述べた。
中国は歴史的には核保有数は少数に抑えてきていたが、ロシアや北朝鮮と同様、危険極まりない速度で核軍備を増強している。これらの地政学的に結びついている3カ国は、核戦力の上限を討議することを拒否し、「米国とその同盟国、パートナーに対し、数的な制限のない核競争の世界に備えることを強いている」。
この新たな軍拡競争がいかに危険かを理解するためには、冷戦時代の軍拡競争について考えてみれば良い。米国とソ連は合わせて6万発の核弾頭を持ってにらみ合い、互いも世界も、絶滅の危機にさらされていた。
両国は核兵器をいつでも発射可能な警戒状態に置き、意図せざる発射の危険があった。その状況は今も変わっていないが、軍備管理条約や冷戦の終結によって米ソ両国の核戦力は削減された。しかし、バディ上級部長は、今や核保有量の減少は逆転するかもしれないと述べ、「相手方の核戦力の傾向に変化がなければ、近いうちに現在の配備数の増加が必要となる状況に至る可能性がある」とした。
中国は現在、500以上の核弾頭を保有し、30年までに1000以上まで増やすことを目指している。米国とロシアが現在配備している核兵器の数は1550である。三者間の軍拡競争は米ソ二者間のものに比べて更に複雑な戦略上の問題を惹起する。