2024年10月27日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月10日

 一方、バディ上級部長は、米国として中露の核弾頭数の合計に合わせる必要はないとの考えを示している。おそらく、核使用の事態はいきなり起こるというよりは、通常兵器を用いての紛争のエスカレーションとして起こるので、中露両国と同時に核の投げ合いになるような事態は想定しがたいとの考えによるものと思われる。

 その意味で、「現状よりは大きく、一方、中露合計よりは小さい数」を検討することになろう。上記社説は、こうしたバディ上級部長の姿勢を紹介しつつ、慎重過ぎないかとのトーンでコメントしている。

誰が核増強しているかを見極めろ

 歴史上、軍備管理・軍縮が進展したのは、①緊張状態の緩和によって従来の軍備が不要となる、②共倒れの危機を避けるため、③財政負担を避けるため、④自分の数量を制限しても相手の数量を制限することに意義を見いだす場合といった誘因によってであった。現在、ロシアも中国もそうした誘因に動かされているとは思えない。その意味で、各国で核軍拡が進むという状況を前提とした上で、核危機の回避、核軍拡競争のできる限りの抑制、核の役割の可能な範囲での低減を考えていくしかない。

 重要なのは、誰が積極的に核増強をして、誰がそれへの対応を迫られているのかの区別をつけることである。そうでないと、「どちらも同じく問題である」と批判するとか、言いやすい相手に向かって「核増強はすべきでない」と説くといった部分的な議論になりかねない。

 なお、東アジアから見ると、核戦力の数的増強と共に、新たな型の核兵器の開発の問題、特に、核搭載の海洋発射型巡航ミサイルを開発するかどうかが積年の重要な政策課題としてあるが、バディ上級部長の演説は、それに触れるものではなかった。

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