反対派の中には、閣僚は民主的に選挙で選ばれるべきと主張したのに対して4年の懲役になったり、司法制度を侮辱したとして6カ月の懲役となった者もいる。自由な社会では、平和的に自分達の意見を表明する権利がある。
このクウェートの疑似民主主義体制では、行政は最適な状態からほど遠いところにあるが、議会も自ら行政府との関係を困難にしている。一般のクウェート人は、経済改革に同意出来ない政治家の無能力さ加減に不満を感じている。
他方、アラブ・バロメーター(註:中東のNGO)の今年初めの世論調査によれば、85%という大多数が、「民主主義体制は、問題があるが、他の体制よりもマシである」という意見を支持している。クウェート政府、そして、30年前にイラクの占領からクウェートを解放するために犠牲を払ったクウェートの友人と同盟国も、このような国民感情を心に留めるべきである。
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独特なクウェート議会の歴史
クウェートの議会解散を理解するためにはペルシャ湾岸のアラブ産油国(GCC)の議会制度、とりわけ、その中でもユニークなクウェートの議会の歴史を理解しなければならない。
まず、GCCの全ての議会は翼賛機関に過ぎない。議会のメンバーは、全員または一部を支配者が任命することが普通であり、全員を国民が選ぶクウェートは唯一の例外だ。
そのクウェートでも、30万人以上が本来、与えられるべきクウェート国籍を与えられずビドゥーンと呼ばれる無国籍者とされている。大多数のビドゥーンはシーア派であり、クウェートの宗教上のバランスを崩さないために国籍が認められていないのだと想像される。
クウェートの人口は約400万人だが、クウェート国籍を有するクウェート人は、人口の40%に過ぎない。他方、イスラム教徒は全人口の85%で、その内、シーア派が30%を占めている。
シーア派のイスラム革命を輸出しようとするイランと隣り合う小国クウェートがスンニ派の大国サウジアラビアの庇護を得るための苦肉の策であろう。そのサウジアラビアも過去にはクウェートを併合しようとしたことがあり、隣国イラクも再びクウェートを占領しようとする可能性も否定出来ず、米軍の駐留は小国クウェートにとり最後の命綱だ。