2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年7月11日

生産性は上昇してる

 ところが大工の生産性は上昇している。図3に見るように、01年から22年で、大工1人当たりの建築面積は1.466倍、建築戸数では1.705倍になっている。

 戸数で見た生産性が面積で見た生産性より上がっているということは、一戸当たりの建築面積が低下したということである。一戸当たりの建築面積は、01年の92.7平方メートル(㎡)から22年の79.8㎡まで低下している(なお、この間で世帯当たりの人数が減っているので、必ずしも1人当たりの住宅面積が狭くなっている訳ではない)。

 大きな家を作るより、小さな家を作る方が面倒だから、真の生産性は、1.466倍と1.705倍の間の1.6倍くらいだろう。生産性が1.6倍になっているのだから給与も1.6倍になっても良いのではないかと思うのだが、前述のように、1.092倍にしかならなかった。

 しかも、大工生産性は実質の概念だが、年間給与は名目である。01年から22年までで消費者物価は1.058倍になっている。すなわち、実質の大工年間給与は1.032倍(1.092÷1.058)にしかなっておらず、ほぼ変わっていないと言える。

なぜ、給与が上がらなかったのか

 生産性が上がったのになぜ給与が上がらなかったかと言えば、生産性の上昇が大工の技能と関わらないところで、むしろ大工の技能を不必要とするように上昇したからである。昔、子どものころ大工が木組みのほぞをノミで掘ったり、カンナをかけるところを見て感心した人は多いだろう。家とは大工の腕で建てるものだった。

 ところが、木組みのほぞは工場であらかじめ加工され、現場で組み立てるだけになった。ツーバイフォーやプレハブ建築ではすべてがあらかじめ作られていて現場での技能が要らないものになっていった。


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