「The Vital Spark」論文(下参照)の筆者、グィジアン・プリンズ ロンドン経済大学名誉教授とジョン・カンスタブル英国再生可能エネルギー財団理事長に世界の気候変動対策と日本の今後について聞いた。
ーー温暖化問題はかつてほど盛り上がっていないように見受けられるが。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第4次報告書を出した2007年頃、温暖化問題について数多くの警告が発せられていた。その後、09年のCOP15(第15回気候変動枠組条約締結国会合)で、京都議定書型アプローチが破綻した。この頃に比べて世界の関心は下がっているが、より現実的な理解が浸透しているのは良いことだ。
ーー京都議定書は失敗だったのか。
意図は間違っていないが、手段を間違えた。各国に削減目標を設定する、トップダウン型アプローチでは、人類文明の炭素強度(GDPあたりの二酸化炭素排出量)は変化しなかった。驚くべきことに、排出量を他のどの国よりも削減したのは、京都議定書の調印を拒否した米国である。それは、シェールガス革命という技術革新によって実現された。
あるパラドクスを解く必要がある。それは、地球上全ての人々が豊かになる、つまりエネルギー多消費社会を獲得しなければ、排出削減に対する合意は得られないというものだ。
これまでの国際交渉で確認されたように、発展途上国が先進国並みのエネルギーを手に入れるのを否定することはできない。世界の底辺にいる数十億人の人々には生きるためのエネルギーすらない。エネルギー多消費の世界だけが、倫理的に正当化でき政治的に実現可能なのだ。しかし現状では、低炭素エネルギー技術に競争力はなく、化石燃料などの炭素強度の高いエネルギーしかエネルギー多消費社会を実現できない。
つまり、温暖化問題解決のために必要なのは、成長と排出削減を両立させる、圧倒的に手頃な価格のエネルギーであり、我々が取り組むべきテーマは、画期的な発明(Invention)と技術革新(Innovation)である。